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「ハセさんと話すと、僕はやっぱり大きな組織は…」元日本代表・岡崎慎司(38)が観客134人のドイツ6部でオーナー兼監督になった“らしすぎる”理由

文春オンライン / 2025年1月10日 17時0分

「ハセさんと話すと、僕はやっぱり大きな組織は…」元日本代表・岡崎慎司(38)が観客134人のドイツ6部でオーナー兼監督になった“らしすぎる”理由

24年6月の引退会見で「代表監督としてワールドカップ優勝を」とぶちあげた岡崎慎司 ©時事通信社

〈 「この間、面白いことがあったんですよ」スター選手から“ドイツ6部アマチュアクラブの監督兼営業”にジョブチェンジした岡崎慎司(38)の変わったところ、変わらないところ 〉から続く

 6部というアマチュアリーグとはいえ、岡崎慎司(38)が現役を引退してすぐに監督の座についたことはドイツでちょっとした話題になった。というのもドイツの体育大学には、監督のライセンスを目指して留学する日本人も多く、そのほとんどがアマチュアクラブでコーチ業をしながらチャンスをうかがっている。そんな人々を一気に追い抜いて監督に着いたことに羨望の眼差しが向けられたのだ。

 岡崎には選手としての圧倒的な実績があり、何よりバサラマインツは岡崎が立ち上げたクラブであり、文句のつけようなどあるはずもない。

 それでも、いくらでも仕事を選べそうな岡崎が本当に6部クラブの監督業を「本業」にするのかを疑問視する人は一定数いた。しかし岡崎はどうやら本気でこの仕事と向き合っているようだ。

「僕は1つのことしかできないというか、テレビの解説業やバラエティをやりながら監督っていうのはできないです。選手だった時は選手に集中したかったし、今は監督に集中していて。その代わり、バサラに関わることは全部やりたいんですよ」

 監督としてキャリアアップするためにはライセンスが必要だが、岡崎は現在プレミアリーグのライセンス講習を受講中で、B級ライセンス取得まであと少しのところまできているという。そして6部バサラマインツでは現役の監督でもある。

「ハセさんと話すと、僕はやっぱり大きな組織に入るのではなくて…」

 岡崎と同時期に引退した長谷部誠はドイツ1部のアイントラハト・フランクフルトでU-21のコーチを務めている。ある種真逆のルートを選んだ2人だが、連絡を取り合って話をすることもあるという。

「ハセさんと話すと、フランクフルトは朝7時からミーティングとか戦術分析とかをしているみたいです。それを聞いて、僕はやっぱり大きな組織に入るのではなくて、自分でひとつひとつやって行くタイプなんだなってあらためて思いましたね」

 岡崎が監督に就任して以来、ここまで戦績は9勝4分6敗と悪くない。セカンドチームの力石尚監督は指導者としてのキャリアは岡崎よりも長いが、岡崎の判断に舌をまくことがあるという。

「慎司さんが前半15分でシステムを変えたら急にうまく回りだして」

「1週間ずっと3バックの練習をしてたんですけど、試合になったら全然うまくいかない時がありました。それを見た慎司さんが前半15分で4バックに変えたら急にうまく回りだして、結局その試合は勝ったんですよ。1週間練習してきたことを捨てる判断は難しいし、早い時間帯でシステムを変えるのも不安なはず。でも思い切って決断できるのはやっぱり何かあるのかなって。監督としての経験はないはずなのに、そういう判断がハマることが何回もあったんですよ」

 岡崎自身は、決して“思いつき”でやったわけではないと強調する。

「選手の頃は監督がシステムを変えるのなんて簡単だと思ってたし、(いろいろなシステムのバリエーションを)用意しとけよって思ってたんですけど、試合中って用意してなかったことが起きるんですよね。だからその時に決断できるかどうか、コーチに何を見てもらうか、どこのプレスがはまってないか、フォーメーションをどう変えたらはまるか、そんなことを戦況が良くなるまでずーっと考えてます。でも考えてもつきなくて、最後は何ていうか運みたいなところもありますし」

 “考えて考えて、最後は運”というのは実に岡崎らしい表現だ。

 プロ選手としてのキャリアは20年、ドイツでもプレミアでもプレーした岡崎だが、アマチュアの世界とは無縁だった。そんな岡崎にとって、6部リーグの選手たちのプレーは「信じられないこと」の連続だという。

「そんなところでドリブルしたら危ないに決まってるとか、『なんでそんなことすんねん』みたいなプレーは多いですよね。プロとアマチュアの違いを考えた時に、一番違うのは生き残りを考えているかどうか。上にいけばいくほど、その世界で生き残るためのプレーを選択するようになるものなんですけど、下のリーグは不思議なプレーが多い。大人になってからそういうプレー中の判断を変えるのは難しいけど、育成世代の子供たちなら変えられるから、それはやりたいなって思ってますね」

 バサラマインツのグループチームのバサラ兵庫には育成組織があり、岡崎の経験やノウハウが若い選手に注ぎ込まれているという。

 一方で、自身のような元トップ選手がアマチュアの環境にいることについて周囲はどう思っているのだろうか。

「そういうことって、自分はなにも考えていないんですよ。だからこそバサラマインツっていうアマチュアクラブを立ち上げたわけだし。でも周りは時々言いますよね。アンドレアス・マイヤー副会長が選手たちに『そんなプレーをして岡崎に恥をかかせるな』とか言ったり。あれはちょっと変な気分ですね」

「結局伝えたいのは、選手としての出だしがどのカテゴリーでも上に行けるということ」

 現在のバサラは6部に所属するアマチュアクラブだが、岡崎は「サッカーはサッカー」だと思っているという。

「結局、選手としての出だしがどのカテゴリーでも、上に行けるチャンスがあることを伝えたいんです。バサラの選手たちを育てていいクラブに行ってもらうのも手だし、クラブ自体が5部に昇格していい選手を受け入れられるようになるのもいい。バサラが強くなって、監督としての僕自身も一緒に上のリーグで戦えるようになりたい。現実的には3部まで行けたら出来過ぎくらいの感じですけど、それができたら今度は僕自身に監督オファーも来るかもしれない」

 日本代表で史上3番目に多くゴールを決め、プレミアでも優勝メンバーになりながら、現在はドイツの地方都市で手探りで自分のクラブを成長させている岡崎慎司。現在の目標は「日本代表監督になってワールドカップで勝つ」「バサラマインツの発展」だという。そう語る挑戦者岡崎慎司は現役時代の印象そのままに希望とパワーに満ちていた。

(了戒 美子)

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