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「羽生さんや浅田さんと今の選手では…」フィギュアスケートの人気が長期低落している“根本的な理由”とは? 「お客さんが減っている」と危機感をあらわにする選手も

文春オンライン / 2025年1月11日 7時0分

「羽生さんや浅田さんと今の選手では…」フィギュアスケートの人気が長期低落している“根本的な理由”とは? 「お客さんが減っている」と危機感をあらわにする選手も

男子競技シーンのトップを走る鍵山優真 ©時事通信社

 フィギュアスケートの人気が長期低落傾向にある。

 選手がさまざまな曲を使用して演技を披露するさまは観ていて飽きないし、ジャンプやスピンなどのフィギュアスケートならではの技も組み込まれている。もちろん競技だから順位がつくが、選手たちの喜怒哀楽にも引き込まれる。

 しかし大会やアイスショーの観客動員が減少傾向にあるのは事実で、2024年には10月の恒例行事だった3地域対抗戦のジャパンオープンも中止になった。ゴールデンタイムに中継される大会も、年末の全日本選手権とNHK杯くらい。2024年の世界選手権で代表に選ばれた三浦佳生選手が新聞のインタビューで「お客さんが減っている」と危機感を露わにしたこともある。

「コアなファンだけだと競技としての人気は広がらないし、むしろ縮小しますよね?」

 フィギュアスケートを取材してきた新聞記者はフィギュア人気の現状をこう語る。

「広告代理店だったりマネジメント事務所、テレビ局などの危機感は強いですね。その雰囲気は選手にも伝わりますし、観客席の空席は一目でわかります。現状を気にしている選手も多いです」

 とはいえNHK杯や昨年末の全日本選手権では、満員の客席がテレビに映し出されていた。どういったところに影響が出ているのだろうか。

「熱心に応援するコアなファンの人たちは一定数いるので、NHK杯の東京の代々木第一体育館、全日本選手権の東和薬品RACTABドームは、満員御礼とまでは行かないもののそれなりにお客さんが入っていました。

 ただ以前はチケット発売日は争奪戦でしたが、今は売れるスピードが全然違いますし、そもそも完売することもほとんどありません。コアなファンだけだと競技としての人気は広がらないし、むしろ縮小しますよね? ミーハーという言葉は否定的に使われがちですが、やっぱりライトなファンがいなくなると息苦しくはなってきますよ」

 熱心なファンたちで会場はそれなりに埋まっても、地上波のゴールデンタイムで流すにはもっと幅広いファン層が必要なのは確かだ。

「それにコアなファンも、以前のように海外まで遠征したり国内の試合をハシゴする人はずいぶん減りました。物価高ですしチケット代も高騰しているので、まずアイスショーはカットして、みたいな人も多いはずです」

 どうしてライトな層はいなくなったのだろうか。

「それはもう、人気スケーターの引退が最大の原因ですね。フィギュアがここまで人気競技になったのは、浅田真央さんが登場し、荒川静香さんがトリノ五輪で金メダル、男子では高橋大輔さんという個人の人気がきっかけでした。そこに羽生結弦さんが現れたことで一気に一般層に浸透しました。

 パトリック・チャンやハビエル・フェルナンデスといった海外のライバル選手と争ってオリンピックで2大会連続チャンピオンになったんですから」

 競技の成績という点では、近年の日本の選手も頑張っている。女子は坂本花織選手が世界選手権で3連覇しているし、男子では鍵山優真選手が北京五輪で銀メダルを取っている。

「男子も含めて選手はみんな頑張っています。ただ、やはり個性が……」

 女子ではむしろ今のほうが総合的には成績が上がっていると言ってもおかしくない。しかしそれではなぜ人気につながらないのか。

「今の日本が強いのはたしかです。成績面で言えば、特に女子は日本のフィギュアスケート史上最強と言っていいでしょう。坂本選手はもちろんのこと、グランプリシリーズの成績上位6名のうち日本勢が5名を占めたのは快挙です。男子も含めて、選手はみんな頑張っています。ただ、やはり個性が……」

 フィギュア取材歴が長い別の記者氏も、「選手の個性」に物足りなさがあるという。

「羽生さんが人気だったのは、オリンピックでの金メダルはもちろん、突出したキャラクター性があったからです。ともかく負けず嫌いで、ライバルに闘志を燃やしてギラギラしていて、でもどこか愛嬌もあって。

 浅田真央さんもそうで、幼い感じの半面トリプルアクセルに頑固なまでにこだわる負けず嫌いな面が個性になっていました。彼らと比べると、今の選手は『いい子』過ぎるかもしれません」

 そしてこう続けた。

「羽生さんと真央さんは人生そのものが漫画やドラマのような、起伏のあるストーリーがありました。その点で、今活躍している選手にはそこまでの何かがない。プロになった羽生さんや真央さんのアイスショーはチケットが争奪戦になっていて、現役の大会は完売しないというのが全てを物語っています。羽生さんにとってのネイサン・チェンや真央さんにとってのキム・ヨナのようなライバルが今は不在なのも大きいです」

 ライバルという点では、来シーズン少し動きがありそうだ。

「実は女子は、来シーズンからロシア選手の復帰が認められました。オリンピックに出られるのは1名になりそうですが、女子でも4回転ジャンプやトリプルアクセルをこなせる選手が出てくる可能性が高く、坂本選手をはじめとする日本勢にとっては強敵。それを打ち破って来年のミラノ五輪で金メダルをとれば、一気に注目が集まると思います」

「もう1人、ストーリー性という点で期待している選手がいます。女子の…」

 そしてフィギュア業界では、坂本花織と同等かそれ以上の人気のポテンシャルを見込まれている選手がいるという。

「もう1人、ストーリー性という点でひそかに期待している選手がいます。女子の紀平梨花選手です。2018年の平昌五輪のときは15歳で年齢制限に引っかかって出られませんでしたが、全日本選手権では3本のトリプルアクセルを成功させて3位に。その後4回転ジャンプも成功させてロシア勢を倒す可能性を持った唯一の選手と期待を集めました。でも2022年の北京五輪は怪我の影響で出られず、現在まで大会は全休です。ここから再起してオリンピックで金メダルなんていうことになれば、日本中にブームを起こすのは間違いないと思うのですが」

 紀平選手はオリンピックを年齢制限と怪我で2度も逃し、その後の怪我との長い闘いも胸に迫る。とはいえ、2シーズン全休している選手に希望を託すところに、フィギュア界の苦境が現れているのかもしれない。

(小野 歩)

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