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配給手数料は従来の半分以下、クリエイターたちに利益還元を…日本映画界に風穴を開ける K2 Pictures の挑戦

シネマトゥデイ 映画情報 / 2024年9月4日 6時20分

 そして K2 Pictures では各窓口手数料を現在の半分以下にすることで、投資家とクリエイターへの利益還元を早く、多くすることを目指すという。ここでの“クリエイター”とは監督をはじめとしたトップに限らず、現場のスタッフまでが含まれる。その背景には、紀伊が現在の日本映画の制作現場に抱く危機感がある。

 「若い人が全然入って来なくなっているんです。これは監督たちもみんな言っていることなのですが、制作の現場は緩慢なる死へ向かっています。でも、東映、東宝、松竹に就職したいという人は多いわけじゃないですか? ペーパーワークだけの人が金を稼いでいて、現場で汗かいて物を生み出している人たちは、作品が当たってももらえるお金は変わらない。僕らは“映画があるから映画業界は存在している”と思っているので、制作の現場に利益を還元したいんです」

 さらに労働環境の改善に向け、映画界が2023年に発表した映適(日本映画制作適正化機構)のガイドラインを上回る完全休養日を設ける。「今の映適では、撮休日は週に1回。撮休は“仕事の休み”とは違って、撮影はしないけど準備をしたり、晴れたら撮影になって翌週に振り替えられたりもします。完全休養日は2週間に1回なんです。なのでそれを超えて、僕らは撮休週1回、完全休業日週1回にします」「今は負のスパイラルに陥っています。経験のある人たちが辞めていき、昨日まで学生だった人が、本当なら4番目の助監督なのに2番目の助監督になっていたりするんです。そんな状況だと失敗しがちなわけですが、誰にも余裕がなく常に圧迫されているとパワハラの温床になりすい。気がつけば、また一人辞めてしまう……。そういうのを改善し、もっともっとたくさんの人たちが入って来られるようにしたいんです」

 そうした K2 Pictures のビジョンに賛同し、共に世界市場を目指した映画製作を進めていくパートナーとなったのは、岩井俊二監督、是枝裕和監督、白石和彌監督、西川美和監督、三池崇史監督、「呪術廻戦」「チェンソーマン」などのアニメーション制作会社MAPPAというそうそうたる面々だ。カンヌでのプレゼンにも登壇した西川監督は、尖ったオリジナル作品を生むのが困難な現在の日本の映画界についても言及していた。

 紀伊は「製作委員会方式では、“オリジナルなものを作るのがリスク”という文化になっています。何でもそうだと思いますが、関わる人数が多くなると、どうしても企画の決定のプロセスにオーナーシップがなくなってしまいますよね。尖がった企画はなかなか通らない。“みんなが喜ぶもの”は丸いものですから」と切り出す。

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