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「大阪人魂」で演じる“熱い男”に注目! 片岡愛之助が、四月大歌舞伎『夏祭浪花鑑』の見どころを語る

CREA WEB / 2024年4月20日 11時0分


片岡愛之助さん。

 映画『翔んで埼玉~琵琶湖より愛をこめて~』では派手なファッションとコテコテの関西弁で大阪府知事を演じ、最新の舞台技術を駆使した娯楽大作『西遊記』では、孫悟空としてワイヤーアクションも披露して暴れまわるなど、幅広い活躍で注目を集めている片岡愛之助さん。

 そして愛之助さんが何より大切にしている古典歌舞伎でも充実した舞台が続いています。歌舞伎座「四月大歌舞伎」で上演中の『夏祭浪花鑑』を始め、近年に演じた役を通しての歌舞伎への思いをうかがいました。


大阪人魂で演じる等身大の熱い男・団七


令和6年4月歌舞伎座『夏祭浪花鑑』団七九郎兵衛

『夏祭浪花鑑』で演じている団七九郎兵衛は、愛之助さんにとってさまざまな意味で思い入れの深い役だそう。

「師であり養父の(片岡)秀太郎の父である十三世(片岡)仁左衛門が何度も勤められた、松嶋屋にとって大切なお役です。それを十三世から受け継いだ(片岡)我當の伯父に習って初めて勤めたのは17年前。その後も何度とか勤めさせていただいていますが、歌舞伎座では初めてなのでとても嬉しいです」(愛之助さん・以下同)

 タイトルからもからもわかるように物語の舞台は大坂、侠客である団七が恩人のために奔走する中で起こる出来事が描かれています。

「団七は堺の魚売りなのですが自分の出身地も堺。この作品に登場する男たちのように気性は荒いけど一本気で情に厚い、そんな人がまわりにはたくさんいました。そうした土地柄特有の気風を肌で感じながら育ったせいでしょうか、特に演じようとしなくても自然に団七になれる、このお役にはそんな感覚があります。大阪弁に関してはネイティブですから、せりふも自分の言葉としてスッと出てきますしね(笑)」


片岡愛之助さん。

 等身大の人物がまさに目の前で生きている、そんな心持ちにさせられるところが愛之助さんの団七の魅力です。それに感化されてのことでしょうか、町ゆく通行人に至るまで登場人物それぞれが生き生きと輝き、舞台は人々のエネルギーが満ちています。

「ですから舞台にいることが非常に楽しいです。皆さんそれぞれがこのお芝居やお役を愛し、真正面から取り組んでくださっているからこそで、僕のほうがむしろ助けられているように思います」


令和6年4月歌舞伎座『夏祭浪花鑑』団七九郎兵衛

 事件が起こるのは夏祭の夜。舅である義平次の悪巧みを団七が阻止したことからふたりはいさかいとなり、ふとしたはずみで団七が手にした刀が義平次に傷を負わせてしまいます。そして引き起こされるのは泥まみれとなっての殺人事件で、その場面はこの作品の大きな見どころです。そこで特徴的なのは歌舞伎特有の見得がいくつも盛り込まれていることにあります。

「初めて団七を勤めさせていただいた時は、ひとつひとつの見得を形よくきちんとすることにとにかく追われていました。それが回数を重ねるうちに、なぜそこでそういう形になるのかが腑に落ちるようになっていったんです。例えば滑っておこついて義平次を見失い、ふっと覗き込んだらそこにいた! というようなことが型になっていた……。そうしたことに気づいてからは見得から逆算して演技を考えるようになりました」

凄惨な場面に息づく歌舞伎の美学


令和6年4月歌舞伎座『夏祭浪花鑑』団七九郎兵衛

 見得は単なるポーズではなくリアルな感情の動きが行動に現われた結果で、それが歌舞伎独特の様式美となって昇華したものだったのです。

 では団七の内面、殺人という行為に及んでしまう人間の心情とはどのようなものなのでしょうか。

「はなから団七に殺意があったのではありません。たまたま刀の刃が義平次に当たってしまい、『親殺し』と騒ぎ出したためにやむにやまれず……、という切羽詰まった心境です。もう後戻りはできない。親父さんに申し訳ないという思いを抱きながらも腹をくくる。そこからは明らかな殺意を持っての行動です。そこに『女殺油地獄』の与兵衛との違いがあります」

 与兵衛とは油屋の惣領息子で、借金の返済に困ったあげくに日頃から何かと世話を焼いてくれていた同業者の女房・お吉を殺してしまう人物のことです。


令和4年11月吉例顔見世興行『女殺油地獄』河内屋与兵衛

「お吉にお金を借りに行ったけど貸してくれなかった。だけど返済の刻限は間近に迫っている。与兵衛の頭の中はお金のことでいっぱいで、刺したら相手がどうなるかまでも頭が及んでいないのではないでしょうか。とにかく必死。そして逃げ回るお吉を追ううちに、その行為がだんだん快楽になっていき、殺めてしまった後でしでかしたことにハッと気づく。非常に刹那的に生きている人物です」

 喧嘩沙汰も日常という侠客の団七と違って、商人の与兵衛は刃物の扱いに慣れていません。

「だからビクビクしながら体ごとつっこんでいく。『夏祭』に比べてぐっとリアルな演技が必要となり、ふたりともこぼれた油にまみれての凄惨な展開となります。ですが、その状況であっても場面として美しくなければならないのは『夏祭』と同じで、そこに歌舞伎の美学があります。現実だったら目を背けたくなるような泥まみれ、油まみれとなっての殺戮をお芝居としての見せ場にしてしまう。歌舞伎だからこその醍醐味だと思います」

 与兵衛は愛之助さんの叔父・片岡仁左衛門さんが二十歳の時に演じて評判となり以後仁左衛門さんの当たり役となった役で、『夏祭』同様に松嶋屋ゆかりの演目です。

 上演中の『夏祭』では、愛之助さんは団七と義兄弟の義を結ぶ徳兵衛の女房・お辰も演じています。


令和6年4月歌舞伎座『夏祭浪花鑑』徳兵衛女房お辰

「心意気は男たち同様でそれゆえに大胆な行動も見せる、非常に魅力的な女性です。団七と二役の彩りの違いも含めてお楽しみいただければと思います」

文=清水まり
写真(インタビュー)=佐藤亘

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