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【四月歌舞伎評】仁左衛門と玉三郎の共演…劇的で至福な、夕方6時5分からの20分間

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年4月16日 9時26分

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歌舞伎座(C)日刊ゲンダイ

 極端に言えば、今月の歌舞伎座は夕方6時5分から25分までの20分だけでいい。仁左衛門と玉三郎の『神田祭』だ。

 仁左衛門の鳶頭がただただかっこいい。玉三郎の芸者が、ひたすら艶やか。

 舞踊劇なのでドラマらしいものもない。この2人も名前はなく、「鳶頭」と「芸者」でしかない。それなのに、何よりも劇的なのだ。

 仁左衛門・玉三郎は半世紀にわたり共演を重ねてきた。その時間が観客を至福の時へと導く。ラスト、花道を去るときに、2人は笑顔で客席を見渡して会釈をする。それは、役者・仁左衛門と玉三郎としてのようでもあり、鳶頭と芸者としてのようでもある。観客としては、もはやそんなことはどうでもよく、この至福の時がこの1秒でも長く続いてほしい。そう思っているのに、2人は去り、幕は引かれる。


『神田祭』の前に、仁左衛門と玉三郎の『於染久松色読販』の「土手のお六・鬼門の喜兵衛」があり、ここでも2人は息のあった芝居を見せる。

 長い芝居の中のひとつのエピソードを抜き出して構成したもので、タイトルのお染と久松は出てこない。仁左衛門・玉三郎とも悪人で、ドラマとしても詐欺が失敗する話で面白いが美しさはない。

 そこで美を補うのが『神田祭』ということになる。ここ何年か、この組み合わせで上演され、定番化した。『神田祭』はカーテンコールに代わるものとも言える。なんとも贅沢だ。というわけで、その次の菊之助や愛之助たちの舞踊劇は霞んでしまう。

 愛之助と菊之助にとっては、昼の部の『夏祭浪花鑑』が見せ場。愛之助はこれまで主人公の団七は何度も演じているが、歌舞伎座では初めて。最近は吉右衛門、勘三郎、勘九郎、海老蔵時代の團十郎と、東京の役者が演じることが多かったので、本場・大阪の団七が歌舞伎座で上演されるのは久しぶり。

 一寸徳兵衛は菊之助。昨年6月に、博多座でこの2人で演じ評判が良かったので、東京への凱旋でもある。それにあたり、愛之助は珍しく女形にも挑み、お辰との二役。予想以上に、さまになっていた。

■名コンビ誕生の雰囲気

 菊之助と愛之助は先月の『寺子屋』でも緊張感のある芝居を見せた。名コンビ誕生の雰囲気だ。菊之助は、先月の『伊勢音頭恋寝刃』でも、幸四郎の脇をつとめていた。何か期するところがあるのだろう。

 こうして、劇界地図が書き換えられようとしているなか、来月は團菊祭。團十郎と菊之助が激突する。

(作家・中川右介)

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