「興味深い体験だった」コロナ後初、北朝鮮を訪れたロシア人観光客のホンネ
デイリーNKジャパン / 2024年2月18日 4時22分
北朝鮮は、コロナ後初めてとなる外国人観光客ツアーの受け入れを行った。9日から12日までロシア各地から集った97人が、ウラジオストク発で平壌、元山(ウォンサン)、馬息嶺(マシンリョン)スキー場を巡る3泊4日のツアーに参加した。
ロシアの国営放送ロシア1とチャンネル1は、記者を同行させてツアーの様子を報じている。
(参考記事:北朝鮮、ロシアから「コロナ後初」の外国人ツアー受け入れ)
ツアーには沿海州、ハバロフスク、イルクーツク、サハリンなどシベリア各地のみならず、モスクワやサンクトペテルブルクなどから98人が参加した。その中には合宿目的の沿海州のスポーツ選手も含まれていた。
故金日成主席と故金正日総書記の銅像、学生少年宮殿が紹介されたが、それよりもスキー場や元山の葛麻(カルマ)海岸観光地区に焦点が当てられた。ロシアや中国からのリゾート目的の観光客を集客したい、北朝鮮の目論見が反映されたようだった。
なお、ロシア科学アカデミー中国・現代アジア研究所の朝鮮半島研究者のコンスタンチン・アスモロフ氏は、RuNews24とのインタビューで、葛麻は孤立した半島になっているため、観光客が北朝鮮の現実を見ることは少なくなると述べている。
また、北朝鮮のホテルでプロパガンダポスターを破こうとしたことでスパイ容疑で逮捕・抑留され、解放直後に死亡した米国人、オットー・ワームビアさんの例を挙げて、ロシア人観光客がそのような失敗をしないように警告している。
(参考記事:北朝鮮が拷問か…死亡の米大学生の歯列変形。米メディアが写真公開)
両局のインタビューに答えた観光客は、スキー場の施設が良く、コースも多いなどと肯定的な反応を示していたが、ホンネは別のところにあるのかもしれない。
米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は、このツアーに実際に参加した人の声を伝えている。
サンクトペテルブルク在住のイリア・ボクスレンスキーさんは、北朝鮮国営の高麗航空に乗り込んだ瞬間から、北朝鮮という国を「感じた」と述べている。
「私がウラジオストク空港で高麗航空に搭乗する様子をカメラに収めたのですが、座席に着いた瞬間、撮影を制止されました。私の隣に座っていた男性が携帯電話で撮影をしていたのですが、乗務員は携帯電話を持ち去って画像を削除しました。まだ離陸前でロシアの領土内にいるのに。これが私の北朝鮮の初印象です。」
逆に、平壌市内中心部の金日成広場では、案内員(ガイド)はむしろ撮影するよう促したという。ただ、銅像は全体を映さなければならない、銅像を背景にするなら直立不動の姿勢を取らなければならないと指示されたという。
馬息嶺スキー場でも監視は続き、自分たちとは言葉は交わさないが、常に自分たちの後ろから見ている人が1〜2名いて、「興味深い経験だった」と語った。
また、決められたスケジュール以外でのホテルからの外出や個人行動は一切禁じられ、その理由を案内員に尋ねると「言葉がわからないから問題になるかもしれない」との答えが返ってきたと、ボクスレンスキーさんは述べた。
印象的な風景について、ボクスレンスキーさんは次のように述べた。
「朝7時に空港に向かうバスの車窓から外を見たが、道を歩く人はほとんどいませんでした。霧がかかった灰色の朝、道には通りかかる車もなく人もいませんでした。まるで映画のワンシーンのようでした。」
ただ、公共交通機関の発達していない北朝鮮では、徒歩や自転車で移動する人で道が溢れ返るのが一般的であるため、その時たまたま人がいなかっただけの可能性も考えられる。一方で、コロナ明け後初めての外国人観光客の受け入れで、新たなコロナ感染を恐れて、当局が何らかの規制を敷いていたこともありうる。
(参考記事:北朝鮮警察も手を出せない「盗賊団リーダー」の素性)
再訪を考えているかとの質問に、ボクスレンスキーさんは次のように述べた。
「政権が変わればまた来たいですね。平壌に行ってレンタカーを運転して北朝鮮を制限なしに旅してみたいです。人々が暮らす街にも行ってみて、言葉を交わして、彼らが利用する商店や美容室にも行ってみたいです。今回の旅行で会えなかった一般住民に会って理解を深めたいです」
今回のツアーでは、北朝鮮の一般人との会話は固く禁じられていたとのことだが、コロナ以前は必ずしも全てのツアーがそうではなかった。日本人の観光客も、案内員の同行の下に簡単な会話を交わすことは可能だった。
また、中国から列車を使って平壌入りする個人ツアーの場合、監視の目が行き届かないせいか、朝鮮語ができるならば一般人と会話し「ホンネ」を聞き出すこともできた。
ただし、これらはいずれもコロナ前の状況で、現在では事情が変わっていることも考えられる。
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