自閉症の新たな治療標的として未成熟な脈絡叢を同定~メトホルミンによる自閉症モデルマウスの治療に成功
Digital PR Platform / 2025年1月8日 14時5分
■発表者■ 東京薬科大学 生命科学部 再生医科学研究室
福田敏史 E-mail:tfukuda@toyaku.ac.jp
TEL:042-676-5136
【 研究背景・経緯 】
精神疾患とは、生まれながらの心や脳の特性(個性)が日常生活に支障をきたす疾患です。代表例として統合失調症や自閉症、注意欠陥多動性障害、学習障害等の発達障害が挙げられます。がん、脳卒中、糖尿病、虚血性心疾患に並ぶ5大疾患の1つとして認定されていますが、詳細な発症メカニズムの解明や治療法の確立は未だ不十分です。
自閉症は社会性の低下やコミュニケーションの障害を含む疾患です。社会性などの高次機能を担う大脳皮質の発生は胎児期に形成が行われて生後早期まで成熟過程が続きます。従来から自閉症の研究としては、大脳脂質の神経細胞におけるシナプス形成や興奮性・抑制性神経のバランスの欠如、グリア細胞やミエリンを形成するオリゴデンドロサイトなどに関する報告が多くを占めています。一方で、大脳の内側に存在する脳室には脈絡叢と呼ばれる組織が存在しており、胎生期における大脳の発生期には甲状腺ホルモンやレチノイン酸を運搬する因子や神経栄養因子などを豊富に含む脳脊髄液を産生します。脈絡叢は大脳の発生より先に機能的な成熟をするにも関わらず、自閉症などの精神疾患と関連させる研究はほとんど行われていませんでした。
2010年に精神疾患関連蛋白質DISC1に結合する新規蛋白質CAMDI (Coiled-coil protein Associated with Myosin IIa and DISC1)の発見を報告しました。CAMDIは胎生期の大脳皮質で発現が認められ、細胞内において中心体で局在が認められること、発現阻害により大脳皮質神経細胞の移動異常を示すことを明らかにしました。また、CAMDI遺伝子は染色体上の自閉症の原因領域の一つである2q31.2に存在します。そこで全身の細胞でCAMDI遺伝子を欠損するマウスを作製したところ、神経細胞移動の遅延、HDAC6の過剰活性化を伴う中心体の未成熟に加えて自閉症様の行動を示しました。さらに胎生期にHDAC6特異的阻害剤の投与を行ったところ、神経細胞移動の遅延が回復し自閉症様行動が改善しました。その一方で、自閉症様行動の原因が脳内の神経細胞の移動異常だけで説明できるのか、という「問い」が生じたことから、そのほかの組織の機能や現象へのCAMDIの関与が示唆されていました。
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