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追手門学院大学などの研究チームがフッ化物超イオン伝導を示す新物質を創出 ― 次世代電池「全固体フッ化物イオン電池」の開発が大きく加速

Digital PR Platform / 2025年1月15日 14時5分

追手門学院大学などの研究チームがフッ化物超イオン伝導を示す新物質を創出 ― 次世代電池「全固体フッ化物イオン電池」の開発が大きく加速



追手門学院大学(大阪府茨木市、学長:真銅正宏)高見剛教授の研究チームは、九州大学の多田朋史教授と共同で、簡便な化学フッ化を用いてデータベースに存在しない新たな物質の合成に成功し、室温付近でフッ化物イオンが超イオン伝導することを実証した。「全固体フッ化物イオン電池」は、カーボンニュートラルの実現に向け、リチウムイオン電池に代わる次世代の蓄電池として期待されるもの。その開発においては、これまで室温状態で動作する超イオン伝導体の発見が課題となっていたが、今後、フッ化物イオン(F⁻)を拡散させる固体電解質の開発に向けた合成戦略の広がりが期待される。本研究成果は、2025年1月14日(英国時間)に英国王立化学会の学術誌「Journal of Materials Chemistry A」に掲載された。




【本件のポイント】
○化学フッ化による全く新しい構造体の合成
○フッ化物イオンの拡散に伴う超イオン伝導を室温付近で達成
○富岳を使用した第一原理計算により、超イオン伝導の全貌を解明

【概 要】
 カーボンニュートラルの実現に向けて、電気を繰り返し充放電できる二次電池の重要性が増している。現在、主流であるリチウムイオン電池に用いられるリチウムは、埋蔵量が少なく、供給が需要に追いつかなくなるという懸念もあり、レアメタルを使用せずに高いエネルギー密度を持つ次世代電池の開発が進められている。
 高見教授は、次世代電池としてリチウムイオン電池より高いエネルギー密度を誇るフッ化物イオン電池のなかでも、正極と負極間でイオンの輸送を担う電解質に固体を用いた「全固体フッ化物イオン電池」の研究を行っている。
 フッ素原子は、"Magic element"とも呼ばれ、水素原子に次いでファンデルワールス半径[用語1]が小さく、非常に大きな電気陰性度[用語2]を誇る。このため「極めて小さく、電子を引きつける力が非常に強い」というユニークな特徴を持つ。本研究では、このようなユニークな元素であるフッ素がイオン化したフッ化物イオン(F⁻)が、固体中で高速に拡散するイオン伝導体を対象としており、全固体フッ化物イオン電池(FIB)[用語3]の固体電解質[用語4]としての応用が期待されている。
 現状、FIBの動作温度が室温を超える140゜C以上に限定されていることが課題で、この最大の要因は、固体電解質のフッ化物イオン伝導率が低いことにある。従って、FIBの未来が、固体電解質の開発に委ねられている[T. Takami et al., J. of Phys.: Condens. Matter 35, 293002 (2023)]。
 直近の研究成果では、Tl₄.₅SnF₈.₅およびその置換系を合成し、既存の固体電解質La₀.₉Ba₀.₁F₂.₉に匹敵するフッ化物イオン伝導率を報告した[T. Takami et al., Chem. Mater. 36, 8488 (2024).]。本研究では、その過程で、lone pairイオン[用語5]であるTl⁺の大きな分極率[用語6]が、(F⁻)の拡散を促進している可能性を見出した。そこで、同じくTlを含むTlF(フッ化タリウム)に着目して、化学フッ化によりフッ化物イオン伝導の発現を試みた。

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