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ヒト21番染色体部分モノソミーiPS 細胞の作製に成功 ~ヒト染色体欠失症やダウン症の機序解明や治療標的発見への応用を期待

Digital PR Platform / 2025年1月15日 14時5分

 本成果は、以下の事業・研究領域・研究課題によって得られました。
 AMED再生・細胞医療・遺伝子治療実現加速化プログラム(基礎応用研究課題)、AMED 革新的先端研究開発支援事業(LEAP)、AMED生命科学・創薬研究支援基盤事業(BINDS)、JST CREST、生命創成探求センター共同研究(ExCELLS)などの支援を受けて行われました。

<研究の背景と経緯>
 ヒト2倍体細胞は2組の染色体を維持しており、これは増殖に不可欠です。一般に、それぞれ2本ある常染色体のうち1本、またはその長腕あるいは短腕全体を欠損するヒト細胞は生存できないとされています。一方染色体の部分的な欠損によって生じる染色体欠失は、重篤な臨床症状を伴いますが、この原因は、欠損し1コピーとなった(モノソミー化した)染色体領域に含まれる遺伝子の発現量が半分に低下することと考えられています。このように、生物学的、臨床的に重要な現象であるにもかかわらず、染色体欠失に関する研究はこれまでほとんど進んでいませんでした。その背景には、染色体の喪失が細胞に与える影響を研究するための適切なモデル細胞の作製が困難という事実がありました。正常2倍体細胞で染色体欠失を誘導するため、CRISPR/Cas9を利用したゲノム編集技術をはじめ、さまざまな手法が試みられてきましたが、欠失効率は非常に低く、また薬剤耐性などで染色体欠失細胞を選抜する煩雑な工程が必要でした。そのため、より高い効率で正確に、かつ選択培養なしに特定のヒト染色体領域を欠失させる技術の開発が強く求められていました。

<研究の内容>
 本研究では、CRISPR/Cas9を介したメガベーススケールの染色体欠失により、部分モノソミーヒトiPS細胞パネルを作製する簡便かつ効率的な方法を開発しました。まず21番染色体(HSA21)をモデルとして、HSA21の長腕(21q)の大部分をカバーするさまざまな領域(4.5~33.6 Mb)を欠失させるガイドRNA(gRNA)をデザインしました。Cas9/gRNA-リボ核タンパク質(RNP)複合体をトランスフェクションした後、蛍光活性化セルソーティング(FACS)による単一細胞ソーティングを用いて、目的の欠失を持つ部分モノソミー21qiPS細胞を選択培養なしで高効率(0.6%から18.6%)に単離しました(参考図1、2)。それぞれの部分モノソミー21qiPS細胞において、倍加時間は親細胞と同等であり、核型は極めて安定で、HSA21以外の染色体は正常でした(参考図3)。さらに驚くべきことに、21q上の全タンパク質コード遺伝子(211個)を含む21qの大部分(33.6 Mb)の欠失にも成功し、世界で初めて21qモノソミーヒトiPS細胞が樹立されました(参考図4)。部分モノソミー21qiPS細胞のトランスクリプトームおよびプロテオーム解析の結果、モノソミー領域内の遺伝子によってコードされるmRNAおよびタンパク質の発現量は、概ね2倍体発現レベルの半分であることが明らかとなり、転写および翻訳レベルでの遺伝子量補償が起こっていないことが示されました(参考図5)。

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