1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. プレスリリース

ヒト21番染色体部分モノソミーiPS 細胞の作製に成功 ~ヒト染色体欠失症やダウン症の機序解明や治療標的発見への応用を期待

Digital PR Platform / 2025年1月15日 14時5分

<今後の展開>
 本研究で開発されたシンプルかつ効率的な染色体欠失誘導技術は、正常核型バックグラウンドに部分モノソミーを持つ、同一な遺伝的背景の(アイソジェニック)モデル細胞の作製に有用であり、染色体欠失の細胞への影響に関する新たな知見を得るために広く応用可能であると期待されます。具体的には以下①~④に示す展開が期待されます。
① 染色体欠失の発生過程における影響の解明:分化多能性を有するヒトiPS細胞を親株に用いているため、特定の染色体欠損が発生過程に与える影響を試験管内分化系によって調べることができます。ヒト21番染色体部分モノソミー症は、心臓障害、発達遅延、知的障害など様々な表現型を示す希少疾患であり、21q上の欠失領域に関連する症状の原因遺伝子を同定するための貴重な研究資材となります。
② 細胞増殖に必須な配列のスクリーニング:本技術によって、細胞増殖に必須な蛋白質コード領域および非コード領域の配列を系統的にスクリーニングすることが可能となり、合成生物学(注10)の課題の一つであるヒトゲノムの最小化(注11)に向けた研究が加速すると期待されます。
③ ヒト人工染色体(HAC)の構築:再生医療や遺伝子治療への応用が期待されるHACの構築が容易になります。私たちのグループが開発したHSA21由来のHACは、1コピーでの安定維持や導入遺伝子のサイズに制限がないなど、遺伝子導入ベクターとしていくつかの利点があり、その有用性が実証されています。しかし、その構築は複雑で時間を要するプロセスです。所望の染色体領域を正確に欠失可能な本技術を用いて、臨床グレードのヒトiPS細胞でHACを構築できれば、その臨床応用が加速すると期待されます。
④ ダウン症研究および治療法の開発:本技術はHSA21の特定の染色体領域を正確に欠失させることができるため、ダウン症(21番染色体トリソミー)に伴うさまざまな症状の原因遺伝子の解明と治療標的の同定、および新規治療法の開発に貢献すると期待されます。

以上


<参考図>
(図2)
 CRISPR/Cas9メガベース欠失による21q部分モノソミーiPS細胞パネル作製の方法概略。 (上左)21q領域全体(約34 Mb)を欠失させるために設計されたガイドRNA(gRNA)ペアの位置が示されている。
 (下)Cas9タンパク質とgRNAペアからなるRNP複合体を、エレクトロポレーションにより正常ヒトiPS細胞に導入する。処理したヒトiPS細胞を、非選択条件で標準的なフィーダーフリー条件下で培養する。細胞クローンをFACSにより単離し、その後、目的の欠失の存在を確認するために、欠失部位の配列に特異的なプライマーペア(F-プライマーおよびR-プライマー)を用いたPCR分析を行う(上右)。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください