もしもトランプ氏が“ハッタリ”ではないとしたら?
Digital PR Platform / 2025年1月16日 14時17分
「トランプ氏の積極的な政策実施」リスクシナリオにおける経済環境については、米国とその他地域で大きな違いがあると考えます。多くの国や地域においては、貿易活動の停滞や設備投資の保留、センチメントの悪化により経済は景気後退に向かい、各中央銀行は積極的に利下げを実施することを想定しています。一方、米国経済はスタグフレーション方向に傾くと考えます。つまり、トランプ氏の米国第一主義の政策は、米国経済成長を減速させるとともに、インフレ率の上昇を招くと考えています。
供給に制約がかかることで、米国経済にはスタグフレーション圧力がかかる
トランプ氏は大規模な財政拡張政策を実施する可能性があるものの、需要の拡大は供給の悪化に直面するでしょう。大幅な関税引き上げは、企業コストへの吸収(利益率は低下)とドル高によって一部相殺されるものの、モノのインフレを招く可能性が高いと考えます。しかし、より大きな懸念事項は、非正規移民の強制送還や移民規制の強化により労働力が不足し、賃金上昇とサービスのインフレを招くことです。
例えば、米国のシンクタンクであるピーターソン国際経済研究所は、10%の関税引き上げは米国のインフレ率を一時的に1%程度押し上げる可能性がある一方、大量の強制送還は直ちにインフレ率を3%以上押し上げ、正常化まで数年を要すると分析しています。
供給面での混乱により経済成長は減速に向かい、その後、2026年以降に景気刺激策が実施されることで再加速するとみています。
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米国の調査機関であるピュー・リサーチ・センターは、国勢調査を基に、2022年の米国労働者のうち約830万人が非正規移民であったと推計しています。
「トランプ氏の積極的な政策実施」リスクシナリオにおいて、供給サイドの混乱により、米国経済の潜在成長率は年率1.5%程度に低下すると考えます。言い換えると、名目経済成長は、実質経済成長率ではなく、インフレ率の上昇による要因が大きくなるとみています。
その場合、米連邦準備制度理事会(FRB)は窮地に立たされるかもしれません。2025年、他の中央銀行が金融緩和を進展させる一方、スタグフレーション環境においてはFRBは追加利下げを行うことができず、ドル高がさらに進行する可能性があります。そうなった場合、FRBはトランプ政権から批判を浴びる可能性が高く、パウエル現FRB議長の任期満了後(2026年5月まで)には、金融緩和により従順な人物が新たに抜擢される可能性があります。米国経済成長率を高めるため、米国政策金利は2026年末までに3%まで引き下げられるとみています。財政収支と貿易収支が赤字の状態である「双子の赤字」を巡る懸念も相まって、最終的には米ドル安を招くと考えています。
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