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ミトコンドリア・小胞体接着点の制御により筋萎縮を改善することを発見

Digital PR Platform / 2023年12月14日 12時5分

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~筋萎縮時における再生医療として期待~

藤田医科大学国際再生医療センターの佐藤 貴彦講師(医学部解剖学I兼任)率いる研究チームは、微小重力環境下で筋萎縮が誘導される際に、ヒトの筋細胞においてミトコンドリアと小胞体の接合点(MAM)が減少することを明らかにしました。本研究では、ヒト筋細胞およびヒトiPS細胞を用いて、MAM形成に不可欠なMitofusin2(MFN2)遺伝子の機能を解析しました。その結果、ミトコンドリアを含むオルガネラネットワークが破綻した際に、活性型Notchが筋萎縮と関連していることが確認されました。これらの研究成果から、微小重力などが引き起こす様々な筋萎縮に対して、MAMの制御やNotchシグナル経路の抑制が改善効果をもたらす可能性が期待されます。
本研究成果は、eLife Sciences Publications, Ltd(Cambridge,UK)の学術ジャーナル「eLife」のオンライン速報版として2023年12月12日(イギリス時間12月11日)に公開されました。
論文URL : https://doi.org/10.7554/eLife.89381.2

<研究成果のポイント>

筋の萎縮や再生抑制は老化の自然な結果ですが、その詳細なメカニズムは不明でした。
微小重力下での筋萎縮を防ぐために、ミトコンドリア・小胞体接着点(MAM)の適切な維持が重要であることが本研究で明らかとなりました。
微小重力によるMAMの減少およびMFN2欠損ヒトiPS細胞での解析の結果、Notchシグナル経路の活性化を引き起こすことが分かりました。
Notchシグナル経路の抑制効果のあるガンマセクレターゼ阻害剤の投与により、微小重力下での萎縮筋やマウスにおけるMfn2欠損筋幹細胞の再生能力が改善されたことからMAMとNotchシグナルの調節が、筋萎縮再生に重要な役割を果たすことが示されました。


<背景>
日本において長寿命社会が実現されつつある中、高齢者の運動機能維持は大きな社会的課題となっています。特に「寝たきり」は高齢者の生活の質を低下させるだけでなく、介護者の負担や社会保障費の増大にもつながっています。この状態の原因の一つに、廃用症候群などの運動器障害が挙げられます、その中でも筋が長期間使われないことで生じる廃用性筋萎縮が重要視されています。この筋萎縮は外部からの力学的負荷(メカノストレス)が不足することが一因と考えられています。実際、筋力トレーニングなどの強制的メカノストレスは筋萎縮の症状を緩和することが知られています。しかし、メカノストレスが筋の恒常性維持にどの程度寄与しているか生命科学的な詳細についてはまだ十分に解明されていません。
宇宙実験によっても筋萎縮が観察され、その際には筋細胞内でミトコンドリアの形態異常などが報告されています。また、ミトコンドリア関連分子の遺伝子変異も筋萎縮が関連していることから、ミトコンドリアは筋萎縮と深く関わっていると考えられます。個体レベルでも、ミトコンドリア機能の変調が筋萎縮を引き起こすことが明確です。このことから、骨格筋内のミトコンドリアが細胞膜下で筋線維を機械的にサポートし合っている可能性が高く、骨格筋におけるメカノセンシング過程においてミトコンドリアが関与するものと考えられています。

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