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内視鏡止血成功後の食道静脈瘤破裂患者に対する院内死亡予測スコアを世界で初めて開発

Digital PR Platform / 2024年3月14日 10時0分

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―スコアに基づいた適切なリスク管理が可能に―


 横浜市立大学大学院データサイエンス研究科ヘルスデータサイエンス専攻 市田親正医師(博士前期課程2年、湘南鎌倉総合病院 消化器病センター 部長)、清水沙友里講師(同専攻)、後藤匡啓客員講師(TXP Medical株式会社)らの研究グループは、徳洲会メディカルデータベース*1を用い、内視鏡止血に成功した食道静脈瘤破裂患者に対する院内死亡予測スコア:HOPE-EVLスコア(図1)の開発と検証を行いました。
 本研究成果は、日本消化器内視鏡学会の査読付き英文雑誌「Digestive Endoscopy」に掲載されました。(2024年3月11日オンライン先行公開)


研究成果のポイント
・食道静脈瘤破裂は致死的な疾患であり、内視鏡止血成功後も高い院内死亡率が指摘されているものの
 院内死亡を予測するモデルは世界的にも作成されていません。
・通常の診療で得られるデータを利用した、簡易で信頼性の高いスコアの開発に成功しました。
・スコアを用いることで、リスクに応じた病床管理、患者・家族への客観的な予後説明が可能になり
 ます。


[画像1]https://digitalpr.jp/simg/1706/84704/600_308_2024031214064065efe2e0cdc13.jpg


図1 HOPE-EVLスコアの概略



研究背景
 食道静脈瘤破裂は肝硬変を背景に持つ重篤な消化管出血の一つです。止血の第一選択は内視鏡による止血術であり、高い成功率を認めています。しかしながら、止血成功後も様々な併存疾患を発生する可能性が指摘されており、20%超の死亡率を報告した研究も認めます。このため、一般的には重症病床管理や患者・家族への厳しい予後説明が行われてきました。一方、併存症を発生せず短期間で退院していく患者も多く認めており、食道静脈瘤破裂に対する適切な予後予測は重要な課題でした。そこで、我々は止血に成功した食道静脈瘤破裂に対し、臨床現場で使用できる簡易さを保ちつつ、院内死亡率を予測するスコアの開発を目的とし、本研究を行いました。


研究内容
 救急医療に注力している医療法人徳洲会の医療データベース(徳洲会メディカルデータベース)の46施設、13年間のデータから、食道静脈瘤破裂に対して内視鏡止血に成功した980人の患者データを分析に使用しました。徳洲会メディカルデータベースは一連の診療行為全てがデータ化された診断群分類(Diagnosis Procedure Combination, DPC)データと採血結果・バイタルサインなどの電子カルテ情報を連結することで詳細なデータを得ることが可能なデータベースです。本データベースを用い、院内死亡率を予測するスコアを開発しました。変数の選択は機械学習手法の1つであるLasso回帰*2を用い、収縮期血圧(2点)、意識レベル(1点)、総ビリルビン(1点)、クレアチニン(1点)、アルブミン(1点)といった来院から止血成功、入院までに得られる5つの因子が同定され、HOPE-EVL (Hospital Outcome Prediction following Endoscopic Variceal Ligation)スコアと命名しました。HOPE-EVLスコアの識別力は検証コホートでのAUC*3:0.89と優れた結果を示し、既存のスコアや年齢のみの指標を上回る識別力を示しました(図2)。HOPE-EVLスコアは0-1点を低リスク、2-3点を中リスク、4点以上を高リスクとしてグループ化され、検証コホートでの予測力は低リスク:2.0%(観測値)、2.3%(予測値)、中リスク:19%(観測値)、 22.9%(予測値)、高リスク:57.6%(観測値)、71.9%(予測値)と正確な予測力を示しました。以上の結果より、HOPE-EVLスコアによってこれまで一般的に高い死亡率を認めると思われていた食道静脈瘤破裂が5つの因子によりリスクの層別化が可能であることがわかりました。

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