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脳が酸性に傾く精神・神経疾患モデル動物を多数発見

Digital PR Platform / 2024年3月27日 10時3分


結果の意義
この研究は、精神・神経疾患の動物モデルにおける脳のpHおよび乳酸量を包括的に評価した初の大規模研究です。得られた知見は、認知機能障害を伴う様々な疾患に共通する脳内の特性を理解する新たな手がかりとなる可能性を持ち、既存の疾患分類の枠組みを超える影響をもたらすかもしれません。


<今後の展開>
本研究の成果は、神経科学や精神医学の分野における新たな研究方針や精神・神経疾患の治療戦略の開発に貢献することが期待されます。様々なモデル動物は、疾患の特定の症状や特定の患者サブグループに対応する可能性があります。各モデル動物の脳のpHおよび乳酸量の変化に焦点を当て、それが生じる脳領域を特定し、その変化の詳細なメカニズムを解明することで、対応する症状や状態における脳病態の理解が深まることが期待されます。また、乳酸およびpHの実体である水素イオン(H+)は、様々なタンパク質に結合してその構造や活性を調節するなどの機能を持っていますが、疾患におけるpHや乳酸量の変化が病態や症状に対して与える影響が良いのか悪いのかはまだ明らかではありません。これらの変化の機能的な意味を解明することで、将来、脳の代謝変化という生物学的特徴に基づく新たな治療法の開発が進むことが期待されます。

本研究の一部は、MEXT/JSPS科学研究費補助金(JP16H06462、JPMXP0618217663、JP20H00522、JP16H06276、JP18K07378、JP21K19314)、AMED脳科学研究戦略推進プログラム(JP18dm0107101)による支援を受けて行われました。本発表に関連し開示すべき利益相反関係にある企業等はありません。

本プレスリリースの内容はモデル動物を用いた基礎研究での研究成果についてであり、これがすぐに臨床応用できるわけではありません。また、脳のpHや乳酸量を上げる、あるいは下げるような方法で疾患が改善するということを証明しているわけではありません。


<用語解説>
注1. pH(ピーエイチ、あるいはペーハー):水溶液中の水素イオン(H+)濃度を表す指標。通常0〜14の範囲の数値で表され、7を中性とし、7より小さいと酸性を、7より大きいとアルカリ性を表します。正常ヒト血液のpHは7.38〜7.42に保たれています。細胞内外ではpHに差があり、細胞外に比べ、細胞内はやや酸性(pH 7.0〜7.4)に保たれています。今回の研究では、すりつぶした脳を用いて、細胞内と細胞外を平均化したpHを測定しています。
注2. 乳酸:脳や筋肉などにおいて、細胞の活動のためのエネルギーを得るためにグルコース(ブドウ糖)やグリコーゲンなどの糖が分解されてできる生成物。乳酸自体もエネルギー源として利用されます。
注3. 統合失調症:陽性症状(幻覚や妄想)、陰性症状(無関心、意欲の低下、社会性の低下)認知障害などが認められる精神疾患。
注4. 双極性障害:躁状態とうつ状態の二つの病相が周期的に交代して現れる精神疾患。日本人の生涯有病率は0.7%程度とされています。
注5. 代謝:生体内で生じる化学反応の総称。グルコースからエネルギーを取り出して乳酸が生成される過程も代謝の一つです。
注6. 自閉症:コミュニケーション異常や固執性などを主徴とする精神疾患。全人口の約2%が発症すると言われています。
注7. 作業記憶:短期的な情報を一時的に保持し、それを活用して課題を実行するための脳の機能の一部。作業記憶は私たちが短時間に情報を処理し、それを使って様々な活動を行うのに役立つ脳の機能です。

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