ヒトとマウスでは違う? 卵子・初期胚で働くヒトDPPA3によるUHRF1の機能阻害機構を解明
Digital PR Platform / 2024年6月21日 10時0分
横浜市立大学大学院生命医科学研究科 構造生物学研究室(エピジェネティクス構造生命科学)有田恭平教授、白石奈央さん(2023年度博士前期課程修了)、同研究科 構造エピゲノム研究室 小沼剛助教、東京大学医科学研究所 西山敦哉准教授らを中心とした研究グループは、DNAメチル化*1の維持に関与するヒト由来のタンパク質UHRF1*2との母性因子DPPA3*3の複合体構造を、X線結晶構造解析法*4で決定しました。本研究成果は、卵子や初期胚でのDPPA3によるUHRF1の機能阻害がヒトとマウスでは異なる可能性を明らかにし、ヒトの正常な卵子形成や受精、初期胚発生の基礎的なメカニズムの解明に貢献します。
本研究成果は、「Communications Biology」に掲載されました(2024年6月19日)。
研究成果のポイント
X線結晶構造解析法でヒト由来のUHRF1とDPPA3の複合体構造を決定。
DPPA3とUHRF1の相互作用はマウスとヒトで異なることを発見。
ヒトDPPA3はマウスと比べてUHRF1の機能阻害効果が弱いことから、異なる分子機構でUHRF1の機能を制御する可能性を示唆。
[画像1]https://digitalpr.jp/simg/1706/90244/500_280_202406201306476673aad789442.jpg
図1 左:今回決定したヒト由来DPPA3とUHRF1の結晶構造。右:マウス由来DPPA3とUHRF1のNMR構造。ヒト由来DPPA3はマウス由来DPPA3と異なる様式でUHRF1に結合することを明らかにした。ヒト由来DPPA3はマウス由来DPPA3よりもUHRF1との接触面積が小さく、その結果UHRF1の機能を阻害する効果も弱い。
研究背景
マウスを用いた研究から、母性因子DPPA3の機能不全は卵子形成の異常を引き起こすことが報告されています。卵子においてDPPA3はDNAメチル化に関与するUHRF1の働きを制御します。DPPA3はUHRF1のクロマチンへの結合を阻害し、輸送タンパク質と連携してUHRF1を核外に輸送して細胞質に局在させます。DPPA3を遺伝学的にノックアウトしたマウスではUHRF1の異常な細胞質局在やDNAメチル化異常を引き起こし、不妊になることが報告されています。このことから、DPPA3によるUHRF1の機能や局在の制御は正常な生殖に必須です。
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