ヒトiPS細胞由来の肝臓オルガノイド移植による革新的な肝線維化治療法の開発
Digital PR Platform / 2024年7月25日 8時30分
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図1: ヒトiPS細胞由来肝臓オルガノイドの進歩
従来のヒトiPS細胞由来肝臓オルガノイドは移植後に毛細血管を形成可能であった。本研究で開発した新しいヒトiPS細胞由来肝臓オルガノイドは毛細血管に加えてヒト細小静脈の形成が認められ、血管の多様性が増している。
ヒト胎児期の肝臓に近似したヒトiPS細胞由来肝臓オルガノイドの特性を解析したところ、炎症抑制性マクロファージ(M2-MΦ)の著明な誘導活性を示すことが確認されました。ラット肝線維化モデルに新規オルガノイドを移植すると、線維化が生じている肝臓において炎症抑制性マクロファージが誘導され、肝機能や生存率の改善のみならず、従来は治療することが極めて困難であった肝線維化が改善することが明らかになりました。この研究成果は、世界的に多数の患者が存在する肝硬変に対する新しい治療法として臨床応用に繋がることが期待されています。
本研究成果は、2024年7月24日(日本時間7月25日午前3時)、国際科学雑誌「Science Translational Medicine」(オンライン版)で公開されました。
発表内容
<研究の背景>
肝硬変は、ウイルス感染症、脂肪肝、アルコール性肝障害などを背景として進展していく致死的な慢性肝疾患であり、全世界で5000万人以上の罹患患者が存在します。肝線維化が進行すると肝機能が著しく低下するとともに、肝発がんリスクが著明に増加します。肝臓移植は肝硬変に対する根治療法ですが、世界的なドナー不足という深刻な問題が存在することから、代替治療法の確立が喫緊の課題となっています。しかしながら、現時点において進行した肝線維症に対する有効な治療法は全く開発されておらず、新たな治療戦略の開発が急務となっています。
肝線維化の進行は、炎症反応と密接に関係していることが確認されています。古くから、肝臓内の炎症反応にマクロファージが関与することが報告されており、炎症促進性マクロファージと炎症抑制性マクロファージの両者が存在することが確認されていました。肝臓内の炎症反応は、炎症性マクロファージが優位になることで悪化することが報告されており、炎症抑制性マクロファージを介する炎症制御をいかに行うのかが重要ポイントであると考えられています。しかしながら、これまでに炎症抑制性マクロファージの生体内における制御法は確立されていませんでした。
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