ヒトiPS細胞由来の肝臓オルガノイド移植による革新的な肝線維化治療法の開発
Digital PR Platform / 2024年7月25日 8時30分
他方、肝線維化の進行は炎症反応と密接に関係しており、この炎症反応に肝臓内のマクロファージ(注3)が深く関与していると考えられています。本研究では、胎児期の肝臓が造血発生の場となっていることに着目し、造血細胞のひとつであり、胎児肝臓内に豊富に存在するマクロファージが肝線維化改善に及ぼす効果を検討しました。ラット肝線維化モデルに発生中期の胎児肝臓を移植したところ、生存率の著明な改善効果とともに肝線維化が改善することを世界で初めて発見しました(図2)。移植を受けたラットでは、様々な肝機能マーカーの改善が認められ、このラットの肝臓内では、CD163を発現する炎症抑制性マクロファージ(M2-MΦ)が増加していました。胎児肝臓移植は炎症抑制性マクロファージの誘導をもたらすことが確認されました。
研究グループは、胎児肝臓移植の結果を元に、炎症抑制性マクロファージの人為的な制御による新たな肝線維化治療に関する検討に取り組みました。研究グループが新たに開発した大型化が可能なヒトiPS細胞由来の肝臓オルガノイドをラット肝線維化モデルに移植したところ、ラット胎児肝臓移植と同じように、肝線維化の改善と生存率の向上が見られました(図3)。
[画像4]https://digitalpr.jp/simg/1706/92196/550_413_2024072414202266a08f160c50f.jpg
図3: ヒトiPS細胞由来肝臓オルガノイド移植による肝線維化治療効果
(上)肝線維化モデルへのヒトiPS細胞由来肝臓オルガノイド移植治療の模式図。肝線維化モデル動物の肝臓の表面にヒトiPS細胞由来肝臓オルガノイドを移植すると、肝臓内のマクロファージが炎症抑制性へと変化することにより生存率や肝臓の線維化が改善する。(左下)肝線維化モデルへのヒトiPS細胞由来肝臓オルガノイド移植後の生存率改善。(右下)シリウスレッド染色による線維化評価。ヒトiPS細胞由来肝臓オルガノイド移植により、炎症抑制性マクロファージにより炎症が抑制され、線維化の改善が認められた。
ヒトiPS細胞由来肝臓オルガノイド移植による肝線維化改善の機序について検討するため、ヒトiPS細胞由来肝臓オルガノイドと未熟なマクロファージ(M0-MΦ)を共培養し、マクロファージの特性変化を検討しました。その結果、ヒトiPS細胞由来肝臓オルガノイドは未熟なマクロファージを炎症抑制性マクロファージ(M2-MΦ)に誘導する作用を持つ複数の重要分子を発現しており、炎症抑制性マクロファージの効率的な誘導が可能であることが明らかとなりました(図4左)。さらに、ヒトiPS細胞由来肝臓オルガノイド移植の線維化改善におけるマクロファージの寄与を確認するため、ヒトiPS細胞由来肝臓オルガノイド移植時にマクロファージの阻害効果を示す薬剤(クロドロン酸内包リポソーム(Clodronate liposome))を投与し検討しました。ヒトiPS細胞由来肝臓オルガノイド移植による肝線維化改善はクロドロン酸内包リポソーム投与によりキャンセルされるとともに、肝臓内の炎症抑制性マクロファージ(M2-MΦ)が減少することが明らかとなりました(図4右)。
この記事に関連するニュース
-
iPS細胞由来巨核球と血小板が創傷治癒を促進~既存治療の欠点を解消する新規製剤の開発に期待~
PR TIMES / 2024年11月26日 10時0分
-
ユーグレナ社、新たな医薬部外品・化粧品原料として「パラミロン原末(ユーグレナ多糖体)」を開発
PR TIMES / 2024年11月21日 18時45分
-
AHCC(R)︎が肝線維化の進行を抑える可能性
PR TIMES / 2024年11月20日 18時15分
-
神経-肝型ミトコンドリアDNA枯渇症の新規原因遺伝子を特定 ~世界初の症例を報告~
Digital PR Platform / 2024年11月12日 14時5分
-
神経-肝型ミトコンドリアDNA枯渇症の新規原因遺伝子を特定
PR TIMES / 2024年11月9日 13時40分
ランキング
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください