肝臓の線維化マクロファージが作られる機序を解明~代謝障害関連脂肪肝炎の新規治療法の開発に期待~
Digital PR Platform / 2024年7月24日 14時5分
■ 転写因子Egr2が単球から線維化マクロファージへの分化を促進し、肝線維化を悪化させることを発見しました。
■ 植物性油脂に豊富な不飽和脂肪酸のひとつであるオレイン酸が、Egr2発現を抑制して、線維化マクロファージを減少させることを見出しました。
■ 線維化マクロファージの産生を抑えることで、代謝障害関連脂肪肝炎を治療できる可能性があります。
概要
東京薬科大学生命科学部 免疫制御学研究室 岩田彩花 (大学院博士課程3年)、浅野謙一准教授 (現 横浜市立大学教授)、田中正人教授らは、代謝障害関連脂肪肝炎 (MASH)誘導時に、肝臓に浸潤する単球から線維化マクロファージへの分化にEgr2が重要な役割を担い、肝線維化の増悪に関与することを明らかにしました。さらに、MASHの肝臓に蓄積した長鎖飽和脂肪酸 (主として動物性脂肪)が、単球やマクロファージにおけるEgr2発現を亢進し、線維化マクロファージへの分化を誘導することを明らかにしました。一方で、不飽和脂肪酸 (植物性油に豊富)の一種であるオレイン酸の経口投与が、線維化マクロファージを減少させる効果があることを見出しました。この研究によって、線維化マクロファージの産生機序の一端が明らかになり、Egr2や線維化マクロファージを標的としたMASHの新規治療法開発への道が開かれました。以上の研究成果は2024年6月3日に『Communications Biology』に掲載されました。
本研究は、科研費、AMED-CRESTならびに小野医学研究財団の支援により行われたものです。
研究の背景
代謝障害関連脂肪肝炎 (MASH)は、脂肪の蓄積とそれに伴う慢性的な炎症を背景に、徐々に線維化が進む肝疾患のひとつです。肝線維化が進展すると、肝硬変や肝がんの罹患するリスクが高まるため、線維化の抑制や、形成された線維を溶かす方法の開発が急がれています。白血球の一種である単球は、炎症に伴って肝臓に浸潤し、単球由来マクロファージへと分化します。このマクロファージは瘢痕関連マクロファージ (SAM)や肝脂質関連マクロファージ (hLAM)と呼ばれ、線維の近傍に局在するという状況証拠のみを理由に、線維化を促進する責任細胞だと考えられています。しかし、肝臓内で線維化マクロファージが作られる仕組みや、MASHの病態形成における正確な役割は分かっていませんでした。岩田らの研究グループは、単球からマクロファージへの分化をコントロールする転写因子と環境因子を探索し、MASHの病態形成における単球由来マクロファージの役割の解明を試みました。
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