【東京医科大学】がん細胞をはじめとする種々のエクソソーム分泌の新たな機序解明 ~ 乳がんなどのがん転移阻害剤の開発に貢献する可能性 ~
Digital PR Platform / 2024年7月24日 20時5分
【研究の背景】
エクソソーム*⁴を含む細胞外小胞(Extracellular vesicle: EV)は、あらゆるタイプの細胞から放出される脂質二重膜に包まれた約100nmほどの小さな粒子です。これらの小胞は、細胞からのタンパク質、メッセンジャーRNA、マイクロRNA、脂質のキャリアとして機能し、それによってEVを受け取る細胞におけるシグナル伝達を誘導することが知られています。がん細胞においては正常な細胞と比較してその放出されるEVの量が多いということが明らかとなっており、その分泌されたEVを使って、がん細胞が置かれた環境に存在する他の細胞に働きかけ、自身の生存に有利に環境を作り変えてしまいます。そのため、その分泌されるEVを止めることが新たな治療につながるのではないかと考えました。どのがん細胞においても正常細胞よりEVを出しているのであれば、がんの種類によらず、共通して活性化しているがん細胞特異的なEVの分泌経路が存在すると仮定してスクリーニングを行いました。
【本研究で得られた結果・知見】
1. miR891bはPSAT1の発現量を制御することでEV分泌量を抑制しました
本研究ではがん細胞におけるエクソソームを含む細胞外小胞(EV)の分泌を制御する因子を同定するためにマイクロRNAライブラリーを用いて、網羅的な探索を行いました。その結果、miR-891bを導入した細胞でEVの分泌が抑制されることが明らかとなり、そのmiR-891bのターゲットとしてPSAT1を発見しました。細胞内のPSAT1をsiRNA*⁵を使用して抑制した際も同じようEVの分泌量が下がることが明らかとなりました(図1)。このことからmiR-891bとPSAT1ががん細胞においてEVの分泌に重要であることが判明いたしました。
2. がん細胞におけるEV分泌にセリンセラミド経路が重要であると明らかにしました
PSAT1はセリン合成経路の酵素の1つであり、4つの反応を経てEVの重要な構成因子であるセラミドになるため(図2a)、PSAT1の発現を抑制した際に、細胞内のセリン量が低下すること、さらにセリンを外因的に添加することでEVの分泌量が回復するのか検討しました。結果としてPSAT1の発現を抑制することで低下していたEV分泌量がセリンを補充することでコントロールと同じ程度に回復したことからがん細胞のEV分泌にセリンが重要であることが明らかとなりました(図2b)。
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