【東京医科大学】がん細胞をはじめとする種々のエクソソーム分泌の新たな機序解明 ~ 乳がんなどのがん転移阻害剤の開発に貢献する可能性 ~
Digital PR Platform / 2024年7月24日 20時5分
3. 多くのがん種においてPSAT1は高発現しており、EV分泌に関わることを発見しました
次に、様々ながん種におけるPSAT1の発現量とEV分泌について、公共のデータベースを利用して、正常部位とがん部位におけるPSAT1の発現量を比較しました。PSAT1の発現量は多くのがん種において正常部位と比較してがん部位での発現が高く(図3a)、がん細胞においてPSAT1がEV分泌を担っている可能性が示唆されました。実際、それらのがん細胞株を用いてPSAT1の発現を抑制したところ、どの細胞株においても一定量のEV分泌抑制効果が確認できました(図3b)。これらよりPSAT1は多くのがんにおいてEV分泌を担っていることが明らかとなりました。
4. PSAT1は高転移性がん細胞株で高発現し、EV分泌の亢進に寄与することを同定しました
次にPSAT1で増加したEVがどのようにがんの悪性化に寄与するのかを検討したところ、同じ乳がん細胞でも親株と比較して転移する能力を獲得した細胞株の方がPSAT1の発現量が多いことを明らかにしました(図4左)。さらにその発現量に比例してEVの分泌量も上昇していたことから(図4右)、PSAT1の転移における重要性について検討しました。
5. PSAT1はEVの分泌を介して乳がん転移を促進しました
最後に転移におけるPSAT1の役割を検討するため、乳がんの骨転移モデルと肺転移モデルを使用しました。また、PSAT1過剰発現株とPSAT1発現抑制株を準備して検討に用いました。今回乳がん骨転移細胞が出すEVを受け取る細胞として、乳がんにおける溶骨性転移において重要な役割を果たす破骨細胞を選んで、その活性化を確認いたしました。破骨細胞の活性化はTRAP染色*⁶で赤く細胞が染まり、成熟した破骨細胞の特徴である多核の細胞の割合で評価しました。がん細胞を同じ量の培養培地で培養し、そこから得られたEVを破骨細胞に添加したところ、PSAT1過剰発現株由来のEV、つまりより多くのEVを添加した方が、破骨細胞を活性化することが明らかとなりました(図5a-b)。PSAT1はEVの材料であるセリンをがん細胞に供給することでそのがん細胞が分泌するEVの量を増やしていると考えられ、その量の増加が重要であると示唆されました。それを裏付けるデータとして動物実験を行いました。まず、PSAT1発現抑制株を経尾動脈的に投与することで骨転移するモデルを用いたところ、コントロールと比較して、PSAT1発現抑制株ではがん細胞の骨転移が有意に抑制されました(図5c-d)。逆にPSAT1過剰発現株を経尾静脈的に投与することで肺転移をさせる肺転移モデルではPSAT1過剰発現モデルにおいて肺の微小転移の数が有意に増加することが明らかとなり(図5e-g)、PSAT1の発現は骨転移だけでなく肺転移においても重要であることがわかりました。
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