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プラス電荷を失ったリシン側鎖がつくる新規な水素結合の発見- リシンについて教科書の常識を見直す。新たな分子間相互作用から創薬へ -

Digital PR Platform / 2024年8月27日 14時5分



Ⅱ.研究の成果
まずRcaEの緑色光吸収型におけるRcaEのX線結晶構造(3)から、PCBのD環のN原子とLys261側鎖のN原子との原子間距離が3.07 Åと非常に近く、おそらく水素結合を形成していることが予想されました。通常よりも広範囲の15N核の化学シフトをカバーする1H-15N異種核単量子コヒーレンス(HSQC)NMR測定を行ったところ、緑色光吸収型において、1Hで0.69 ppm、15Nで27.4 ppmという異常に高磁場の化学シフトをもつ信号が観測されました(図3)。また各種多次元NMR実験から、この信号がLys261側鎖のアミノ基(NH2もしくはN+H3)であることが帰属できました。次に、この特異なLys261の側鎖アミノ基に由来する信号を利用して、そのプロトン化状態を解析しました。実験としては、N原子に対して何個のプロトンが共有結合しているのか決定することが可能な1Hカップル1H-15N異種核インフェーズ単量子相関(HISQC)測定を行いました。すると、信号は3本に分裂し(図4)、N原子に対して2個の水素が共有結合していることが示されました。すなわち脱プロトン化し、プラス電荷を失ったNH2状態で存在していることが明らかになりました。しかし、ここまでの実験では、このNH2が担う相互作用については分かりません。そこで、さらに水素結合相手を決定できる方法である水素結合経由のJ結合(注6)によって信号が発生するHNN相関分光法(HNN-COSY)を測定しました。この測定から、PCBのD環のNHとLys261側鎖のN原子の間のh2JNNを経由した信号を検出できたことから(図5)、D環のNH(供与体)とLys261 の側鎖のN原子(受容体)との間の水素結合の存在が直接示されました。

また、タンパク質の量子化学計算によって得られたNH2状態のLys261側鎖の15Nの化学シフトは26.4 ppmで、実験的で得られた値27.4 ppmとよく一致しました。一方、計算で得られたN+H3状態の化学シフトは34.3 ppmであり、NH2状態の計算および測定された化学シフトとは明確に異なりました。脱プロトン化したLys261のN原子とD環のNH基の間の水素結合のポテンシャルエネルギープロファイルは、プロトンが主にD環部分に局在していることを示していました。すなわち、緑色光吸収型のタンパク質環境でのD環のpKa値はLys261のpKa値よりも高いことが示されており、Lys261のN原子は量子化学計算による最適化構造では脱プロトン化されたままでした。このように計算結果は、リシン側鎖が脱プロトン化し、アクセプターとなる水素結合の存在を支持するものでした。

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