新方式の量子コンピュータを実現 ~世界に先駆けて汎用型光量子計算プラットフォームが始動~
Digital PR Platform / 2024年11月8日 13時5分
概要
理化学研究所(理研)量子コンピュータ研究センター光量子計算研究チームの古澤明チームリーダー(量子コンピュータ研究センター副センター長、東京大学大学院工学系研究科教授)、光量子制御研究チームの米澤英宏チームリーダー、日本電信電話株式会社(NTT)、株式会社Fixstars Amplifyの平岡卓爾代表取締役社長CEOらの共同研究グループは、新方式の量子コンピュータ[1]の開発に成功しました。これは世界に先駆けた汎用型光量子計算のためのプラットフォームとなります。
量子コンピュータは量子力学の原理を計算に利用することで、さまざまな問題が超高速で解けると期待され、世界中で激しい開発競争が行われています。理研量子コンピュータ研究センターでも2023年に超伝導方式の量子コンピュータを公開しました。
今回、共同研究グループは、光方式[2]による新型量子コンピュータを開発しました。光方式では、従来の量子コンピュータと比べて高速かつ大規模な量子計算が可能になると期待されており、これまで困難であった計算課題の解決など、量子コンピュータ研究を新たなステージに進めることができます。
今回開発した光量子コンピュータは、インターネットを介したクラウドシステムから利用可能となっています。当面は共同研究契約を通じた利用となりますが、今後、国内の量子計算プラットフォームの利用拡大、量子コンピュータのユースケース(活用法)の創出、国内量子産業の発展と国際競争力の向上に寄与すると期待されます。
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光量子コンピュータ実機
背景
量子コンピュータは世界に革新をもたらす新技術と期待されています。量子力学の原理に立脚し、量子もつれ[3]や量子重ね合わせ[3]といった量子の世界の特徴を巧妙に扱うことで、全く新しい方式のコンピュータが実現できます。量子コンピュータの概念は1980年代に提唱され、その後1990年代に量子コンピュータ特有のアルゴリズムが発見されたことで注目を集めました。2000年代以降、その実現に向けて世界中で基礎研究と応用研究が行われてきました。近年、小規模な量子コンピュータが実現されクラウドベースで提供されるようになり、理研量子コンピュータ研究センターでも2023年に64量子ビットの超伝導型量子コンピュータを整備しクラウド公開しました。
量子コンピュータの実現方式には、超伝導、中性原子、イオン、シリコン、光など、多様な候補があり熾烈(しれつ)な競争が行われています。この中で、光方式の量子コンピュータは、以下のことから非常に有望な候補の一つと考えられています。
(1)計算のクロック周波数(動作周波数)を数百テラヘルツ(THz、1THzは1兆ヘルツ)という光の周波数まで原理的には高められる
(2)他方式と違いほぼ室温動作が可能
(3)光多重化技術[4]によりコンパクトなセットアップで大規模計算が可能
(4)光通信と親和性が高く量子コンピュータネットワークの構築が容易と考えられる
特に光通信で培われた超高速光技術が、光量子コンピュータにとって非常に有用なアセット(資源)であり大きなアドバンテージになります。
古澤チームリーダーは20年以上にわたり、光量子コンピュータ研究のトップランナーであり、その間に理研と東京大学で培ったさまざまな技術が今回の光量子コンピュータに結実しました。基幹部である超広帯域量子光生成デバイスは、NTT先端集積デバイス研究所によって長く研究されている超高速通信用光デバイスを基に開発した量子光源が提供され、クラウドシステムは株式会社Fixstars Amplifyの協力により整備されました。
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