数理モデルの誤差を細胞内のセンサー分子を使って補正する、 コンピューターと細胞が協力するハイブリッドなバイオプロセス制御システムを開発
Digital PR Platform / 2024年11月21日 17時28分
~医薬品、食品、化学材料などの有用物質生産への応用に期待~
藤田医科大学(愛知県豊明市)医学部情報生命科学の国田勝行准教授(兼:精神・神経病態解明センター計算科学部門)、セントルイス・ワシントン大学エネルギー環境化学工学科のFuzhong Zhang教授、奈良先端科学技術大学院大学(奈良県生駒市)先端科学技術研究科バイオサイエンス領域の大久保智樹大学院生、データ駆動型サイエンス創造センターの作村諭一教授(兼:先端科学技術研究科バイオサイエンス領域)らの研究グループは、コンピューターと微生物が互いに協力する新しいバイオプロセスの制御システムを考案し、その有効性をシミュレーションで実証しました。
バイオプロセスとは、細菌や酵母などの生きた細胞を利用して、医薬品、食品、化学材料などの有用な物質を生産する技術です。これらの目的生産物の収量を左右する鍵となるのは、目的生産物の生合成を触媒するさまざまな酵素です。微生物が「合図」となる物質(誘導剤※1)に応答してこれらの酵素を多く作り出すように遺伝子を改変することで、目的生産物の生合成が速く進むようになります。一方で、酵素を過剰に作らせることは、微生物の増殖や生命維持にとっては負担になります。したがって、バイオプロセス全体の生産物収量を増やすためには、誘導剤を与える量とタイミングを調整して、酵素の発現をちょうどいいレベルに制御する必要があります。このような誘導剤の入力を最適化※2するために、細胞内のタンパク質や代謝物などの濃度変化を予測する数理モデル※3が利用されています。しかし、モデルの予測に大きな誤差があると、それを用いて計算された誘導剤の量やタイミングに「狂い」が生じ、結果として生産物の収量が減ってしまうという問題があります。本研究で提案した制御システムは、大腸菌に組み込まれた細胞内の代謝物を感知するセンサー分子により、モデル誤差による酵素レベルのずれを自律的に補正します。これはコンピューターが数理モデルを用いてバイオプロセスの全体を計画し、大腸菌がモデル誤差を補正する相互補完的なシステムです。このアプローチは、バイオプロセスにおけるモデル誤差の問題を克服する一助になると期待されます。
本研究成果は、国際自然科学誌「Scientific Reports(サイエンティフィック・リポーツ)」の2024年11月18日午前10時(BST)オンライン版に公開されました。
URL:https://www.nature.com/articles/s41598-024-76029-1
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