石井岳龍監督×永瀬正敏が解き明かす、「箱男」27年分の思い【インタビュー】
映画.com / 2024年3月20日 12時0分
――永瀬さんは新しい脚本をもらったときに、どんなふうに感じられましたか。
石井「それはわたしも聞きたいですね(笑)」
永瀬「石井監督もおっしゃっていましたけれど、原作に時代が追いついてきたということはすごく感じました。前回のハンブルグ編のときはそこまでまだ、世の中も含めて自分も気づいていなかった部分があったなという。それは世界が変わってきてそこに囚われていく、いい悪いではなく囚われざるを得ないところで。クランクインする前に監督に頂いたヒントでもあったんですが、そういうところが27年経って気づいた本質のひとつでもある気がします。ただ僕自身がやっていることは、じつはあんまり変わらないんですが(笑)」
――役作りのために箱に入って過ごされたことでしょうか。
永瀬「そうですね。ひとつだけできなかったのが、外に出られなかったことで。それは迷惑になるので(笑)」
石井「通報されかねませんね(笑)」
永瀬「はい。でもうちではずっと箱に入っていて、匿名性というものを感じて。いまうちには猫がいるので、やつに気づかれるというのが以前と違いましたが、慣れると猫も箱の中に入ってきて、一緒に落ち着いている(笑)。箱のなかのひとつの宇宙みたいなものが、そこに身を任せるとなんとも言えない気持ちになってくるんです」
石井「いい意味で言うと、すべて捨て去るということは禅的な境地でもありますよね。いい方向に向かえば。でももちろん危険なことでもある。実際のネット社会がそうであるように、匿名性を持つことで人間の悪意が出て攻撃的になる。両方の面を描いているつもりですが、それは観る人が自分なりの感想を持ってもらえればと思います」
――「パンク侍、斬られて候」(2018)以来のおふたりのタッグとなりましたが、石井監督の演出についてとくに印象的だったところはありましたか。
永瀬「たぶん俳優さんたちは全員考えていると思うんですが、石井監督の現場は100%じゃだめなんですよね」
石井「(笑)」
永瀬「150とか160%ぐらい行かないとだめで。こっちが勝手にそう思うんですが、そこはもう最初にご一緒したときからずっと変わっていないです。それと今回のアクションはとても緻密に撮っていて、浅野(忠信)くんとの戦いのシーンなどは、箱に入ってアクションをするのが危険で難しいということもあり、すごく細かくシミュレーションをしたんです」
石井「スタントの方も4~5人、動きの目的に合わせてその都度変わって箱の中に入っていただいているんです。走る人、投げられる人とか。でも箱を被っているから入れ替え可能で、合成的にも便利なキャラクターなんです(笑)」
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