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中国の経済成長を支える、縫製工場の若き出稼ぎ労働者たちのエネルギーを映す「青春」 ワン・ビン監督に聞く

映画.com / 2024年4月21日 8時0分

 2016年以降はフランスの学生に映画を教える仕事があり、また、他の映画のポスプロもあったので、時々湖州に戻って撮るというような形になりました。その時は重点的に撮りたいと思った人にカメラを向けていました。

――「青春」という邦題がつけられました。長時間労働や安い賃金といった労働環境を告発する作品ではなく、労働者たちの若者らしい生き生きとしたエネルギーを映しています。これは長く撮影を進めるうちに見えてきたものなのか、本作の製作を企画した時からの狙いだったでしょうか?

 最初からです。このような若者たちの話にしようと考えました。私たちがこの映画を撮り始めて、この映画の物語に入り込んで行く段階で、働いている人たちに対して一つの分析を行いました。ここで働く人たちは、だいたい16歳から17歳くらいでこの街に来て、最初は見習いからスタートして、一年ぐらいすると熟練工になっていく。その後10年、20年の時間を経て、40歳頃になると街を離れて、農村に帰る人もいる。そういうサイクルになっています。

 ですから若者たちにフォーカスし、この長江地域の経済や生活の状況という、そういう現在の様子を映像にしたいと思ったのです。2019年、20年には映画を完成させる予定でしたが、その後コロナ禍となり、だいぶ遅れて完成しました。

――国のシステムの違いがあると思いますが、例えば日本では外国人の出稼ぎ労働者が、工場や農業に従事し、経済を支えることもあります。中国ではそういったケースはありますか?

 中国は今、政治的に大きな変化が起こっています。コロナ前から始まっていたのですが。そうした中で様々な情報に触れていてわかったのは、中国の民営企業は、すごく大変な状況にあることです。具体的にどれくらいの人が失業しているのかは分からないのですが。今、中国人も仕事を探すのが皆大変な状況にあります。ですから、私は労働力としての外国人がいるのか、そういうデータは全くわかりません。

――この作品に登場する今の中国の若者たちを観察して、監督世代が若かった頃との考え方や行動の変化を感じましたか?

 具体的にどこが違うか語るのは難しいですね。というのも、彼ら出稼ぎ労働者の生活は、自分の時間のほとんどを仕事に費やすことで、最も基礎的な経済条件が整うのです。そういう意味で、彼らが生きる条件はものすごく厳しいものになっています。毎日忙しく働いているので、何か深く物事を考えたりとか、これからどのように生きていくべきか……そんなことを考える時間もないのです。

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