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中国の経済成長を支える、縫製工場の若き出稼ぎ労働者たちのエネルギーを映す「青春」 ワン・ビン監督に聞く

映画.com / 2024年4月21日 8時0分

 このように、生きていくためのリソースがなかなか手に入らないことが、彼らの直接的な感覚を形成していると思います。この生活の大変さをどう解決していくかと考えたり、そして実際に解決できるのか? それは彼らにとっても曖昧なことだと思います。

――中国の若い労働者たちのギリギリの生活が映し出されます。あなたの作品は、自国では公開されず、カンヌなど国際的な映画祭で上映され、その後も外国でのみ公開されるという特殊性があります。彼らはそういったことも理解して、被写体になることを了承したのですか?

 彼らはそういったことはきちんと理解していないと思います。彼らの階級は、映画、映画制作というものに対しての明確なイメージを持っていないのです。例えばドキュメンタリーを見たことがない人もおり、映画が完成したらどうなるのか……ということも想像できない。そして、それをあまり理解したいという気持ちもないようです。

 だからこそ私にとっては彼らが被写体としてすごく重要なのです。映画のことを理解していない、そういう人たちだからこそ、私は彼らの姿を映画にしなきゃいけないと考えます。

 そして、この映画は中国で公開できる可能性はありません。ただ、ネットがすごく発達しているので、例えばカンヌで上映された1カ月後には、もう中国のネットに海賊版が上がっている、という状況があります。ですから、彼らにもこの作品を見られる条件はあると思います。

 本作を見た彼らの感じ方もそれぞれです。感想をくれた人の中には、良かった、というものだけではなく、やはり心配をするようなこともありました。工場で働いていた女の子の一人は、職場で仲良くしていた男性とは別の人と結婚したので……という理由です。

 私の映画はダイレクトに記録する方式をとっているので、被写体を攻撃するような撮り方をしたり、道徳的な圧力をかけるようなことをしないよう、自分の行動にも気を使いました。そして、ドキュメンタリー作家としては、彼らの生活に過度な装飾をすることはできません。ですので、私自身、この映画がすべての人を満足させられる作品ではないと思っています。

――あなたの作品はリアルな中国の姿を映し出しますが、フランスの映画学校で教鞭をとり、作品はヨーロッパの映画祭で高く評価される……そういった環境に身を置いていると、ご自身が西洋的な価値観に引っ張られていく、と感じることはありませんか?

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