【全文掲載】「マリウポリの20日間」監督が命を賭けて取材を敢行した理由を明かす 5800字超の声明文公開
映画.com / 2024年4月26日 11時0分
しかし、私は間違っていたのです。
送信を早く済ませるため、暗闇の中、動画ファイルを3分割し、携帯電話を3台並べて、アップロードを行いましたが、全てを完了するのには時間がかかり、外出禁止の開始時刻をはるかに越えてしまいました。砲撃は続いていましたが、市内で我々を護衛するよう命令された警察官たちは根気よく待ってくれていました。
その後、マリウポリの外の世界との接続は再び切断されてしまいました。外界から隔絶されていた為、我々の報道の信用を失墜させようとするロシアの偽情報キャンペーンが勢いを増していたことを我々は全く知りませんでした。ロンドンのロシア大使館が、AP通信の画像は捏造であり、妊婦は偽物だったとする2つのツイートをポストし、ロシアの国連大使は、安全保障理事会の会合でその画像を印刷したものを掲げ、産科病院への攻撃についての嘘を重ね続けました。
一方、マリウポリでは、戦争についての最新情報を求めて人々が我々の所に押し寄せてきていました。数多くの人々が、マリウポリ外の家族に生きていることを知らせるために自分を撮影して欲しいと私に言ってきました。
その時点で、マリウポリでは、ウクライナのラジオやテレビの電波は停止しており、唯一聴くことが可能なラジオでは、ウクライナ人たちがマリウポリを人質化して建物に銃撃を加え化学兵器を開発しているというロシアのよこしまな嘘が放送されていました。これはプロパガンダとしては非常に効果的で、自らの目で反証を見ているにも関わらず、この嘘を信じ込んでしまった市内の人たちもいたほどでした。
「マリウポリは包囲されている。武器を放棄せよ」
ソ連風のメッセージ放送が絶えず繰り返されていました。3月11日、AP通信のエディターが、産科病院への空爆で生き残った女性たちを探し出して、彼女たちが実在していることを証明できないかと電話をかけてきました。その時私は、あの妊婦の映像は、ロシア政府が反応せざるを得ないほど強力なものだったに違いないと察しました。
空爆された産科病院の女性たちを、最前線の病院で見つけ出しました。その病院には、新生児を抱いた女性も出産中の女性もいました。また、我々が撮影した女性が新生児を失い、その後自らの生命も失ったという事実も、そこで聞きました。
我々は7階に上がり、弱々しいインターネット回線を使って動画を送信しました。その時、病院の敷地沿いに次々と戦車が集まってくるのが見えました。その戦車には、この戦争におけるロシアの標章となっている「Z」の文字が書かれていました。
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