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【全文掲載】「マリウポリの20日間」監督が命を賭けて取材を敢行した理由を明かす 5800字超の声明文公開

映画.com / 2024年4月26日 11時0分

我々が通過したロシアの検問所は15ヶ所で、検問所にさしかかる度に、自動車の前部座席に座っていた母親は、我々に聞こえるほどの大声で猛烈な調子で祈っていました。

3番目、10番目、15番目の検問所には、武装したロシア兵が配置されており、マリウポリが生き残るかもしれないという私の希望は、検問所を通り過ぎて行くにつれて潰えて行きました。ウクライナ軍はマリウポリに到達するのに非常に広大な地域を突破しなければならないこと、そしてそんなことは不可能であることを、私はそこで理解しました。

15番目の検問所の兵士たちは、我々の車列全体にヘッドライトを消すように命じました。それは、道路沿いに置かれた武器や装備品を見えなくするためでした。ロシアの車両に白い塗料で書かれたZという文字だけは何とか視認できました。

16番目の検問所で停車すると、ウクライナ人の声が聞こえてきました。私は溢れ出すような安堵感に包まれ、前部座席に座っていた母親は泣き崩れました。

我々は脱出したのです。我々はマリウポリを最後に離れたジャーナリストでした。現在、マリウポリにジャーナリストは残っていません。我々が写真や動画を撮った人々の安否を知りたい、というメッセージが今でも殺到しています。彼らは、まるで我々が他人ではないかのように、我々が彼らを助けることが出来るかのように、切実で親密なメッセージを送ってくれます。

我々が脱出した後、ロシア軍が数百人もの人々が避難所にしていた劇場を空爆したときに、生存者について取材し、瓦礫の山の下に何時間も閉じ込められる経験とはどのようなものかを直接尋ねるにはどこへ行けば良いのか、私は正確に指し示す事ができます。私はその劇場のことも、その周囲の破壊された家屋のことも知っています。私は、劇場の瓦礫の下に閉じ込められている人々を知っているのです。

そして日曜日、約400人が避難していたマリウポリの芸術学校をロシアが爆撃したと、ウクライナ当局が発表しました。しかし、そこに行って撮影することは、私にはもうできないのです。

【「マリウポリの20日間」概要】

ロシアによるウクライナ侵攻開始からマリウポリ壊滅までの20日間を記録したドキュメンタリー。

2022年2月、ロシアがウクライナ東部ドネツク州の都市マリウポリへの侵攻を開始した。AP通信のウクライナ人記者ミスティスラフ・チェルノフは、取材のため仲間と共に現地へと向かう。ロシア軍の容赦ない攻撃により水や食糧の供給は途絶え、通信も遮断され、またたく間にマリウポリは孤立していく。海外メディアのほとんどが現地から撤退するなか、チェルノフたちはロシア軍に包囲された市内に留まり続け、戦火にさらされた人々の惨状を命がけで記録していく。やがて彼らは、滅びゆくマリウポリの姿と凄惨な現実を世界に伝えるため、つらい気持ちを抱きながらも市民たちを後に残し、ウクライナ軍の援護によって市内から決死の脱出を図る。

チェルノフが現地から配信したニュースや、彼の取材チームが撮影した戦時下のマリウポリ市内の映像をもとに映画として完成させた。・第96回アカデミー賞で長編ドキュメンタリー賞を受賞し、ウクライナ映画史上初のアカデミー賞受賞作となった。また、取材を敢行したAP通信にはピュリッツァー賞が授与されている。

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