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【仏芸術文化勲章受章】黒沢清監督のフィルモグラフィを紐解くマスタークラス 「回路」秘話、フライシャー、三隅研次、ロメール作品との共通点も

映画.com / 2024年6月12日 13時0分

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黒沢清監督作「スパイの妻 劇場版」の一場面

 フランスの芸術文化勲章オフィシエを受章し、最新作「蛇の道」が6月14日に公開を控える黒沢清監督が、6月11日、東京日仏学院でマスター・クラスを行った。

 パリのシネマテーク・フランセーズや日本文化会館で日本映画の紹介につとめ、「カイエ・デュ・シネマ」などで批評活動も行うクレモン・ロジェ氏が聞き手を務めた。

 「黒沢清の探求、それはジャンルの個人的な刷新と同時に、ジャンルに影響を与えた文化的・政治的背景についての知識にもとづいている」とコメントし、黒沢監督とは旧知の仲であるというロジェ氏。シネフィルとしてもフランスでその名を知られる黒沢監督は、代表作「CURE」「回路」などのホラー映画、そしてフランスとの合作ドラマなど様々なジャンルを横断し、制作規模や作品の尺も様々な作品を手掛けてきている。そんな自由な創作活動を行う黒沢監督の日本の映画界での立ち位置をまず問う。

 「自分のポジションは考えていません。この年になっても雑多な映画を撮り続けているのは変わっているのかもしれませんが、過去にはそういった人もいたと思います。年をとるたびにスタイルが確立してくる、小津安二郎のような作家がいる一方で、年を取るごとに可能な限りいろんな種類な映画を撮っておこう、とその範疇が広くなるような作家がいます。近年ではスティーブン・スピルバーグ監督など。僕はどちらかと言えば後者で、やれることをやろうと思うタイプ。そういった監督は日本では少なくなっているのかもしれません」と自身を分析する黒沢監督。

 若き日に鑑賞した「回路」に感銘を受けたというロジェ氏。「90年代、すでにアメリカではホラーのジャンルはやりつくされていたところに、『回路』はホラー映画の新しいフォルムを作り上げた。日本の幽霊映画は復讐のためだが、『回路』はその役割が漠然としていて、明確な役割を与えていないと思う」と指摘する。

 「回路」の抜粋が上映され、「かなり恥ずかしかった。時代を感じますね」と黒沢監督。「当時の、デジタルなのにアナログなモデムの音がどこにつながっているんだろう……と不気味でした。そういう時代だった。あの頃僕は、新しいホラー映画を作ってやろうという意気込みに燃えていた、というよりは、やりつくされているなという諦めから発想していった作品」と振り返る。

 「幽霊映画の大抵は何かの恨み、悪意に基づいた目的をもって出てくるもの。わかりやすい人間的感情である恨みは、幽霊になることによって人間性を描いていたが、異様な超自然的な力になって人間を呪い殺すという幽霊を広めたのは『リング』だと思います。貞子は古典的な怪談のような幽霊ではない。『回路』は、プロデューサーから『リング』みたいなものをやってくれない? と言われて。『リング』はビデオが恐ろしい、では、インターネットが恐ろしいということでやってみよう。と、そこがスタートでした」と「回路」誕生秘話を明かす。

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