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神山健治監督、フィリッパ・ボウエンが語る長編アニメ「ロード・オブ・ザ・リング」企画の経緯、ヘルム王の娘が主人公になった理由

映画.com / 2024年6月12日 14時0分

 僕も最初は「CGじゃなくて手描きですか」という感じだった。荒牧監督はずっとCGでやってこられた方なので、僕のほうに相談してくれたんだと思います。で、僕の答えは「とても難しいんじゃないの?」でした。馬が2000頭も出て来たリ、オークの軍勢が出て来たり、ホビットだけでも大変ですよって。ホビットが大変なのは、その大きさ。ルックは人間と同じようなのでいいんですが、彼らは小さいでしょ? そういうキャラクターの比率を考えただけでも、日本(スタイル)のアニメで作るのは難しいんじゃないかと思いましたね。

 それと同時に日本国内に、これをやりたいというアニメーターがいるんだろうかとも考えました。だから僕も最初、こういう作品はアニメーターであり監督という人でないと難しいと思いますと言ったんです。日本のアニメには詳しいジョゼフさんとジェイソンさんだとはいえ、日本のアニメーターのモチベーションの在り方までは理解していない。つまり、日本のアニメーターにとってもっとも重要なのは、その作品に対してモチベーションを持てるのかということです。彼らには「LOTRだよ? そんな人気作をやりたくない人なんているの?」と言われたんですが、「やりたくないわけじゃない。それがどれだけ大変かということがわかるので、凄く難しいんじゃないのかな」と答えたんです。

 その頃の僕は「どう思う?」と相談されてるくらいの軽い感じで彼らの話を聞いていたんですが徐々に、彼らは本気でアニメを作りたい、しかも日本のスタイルで作りたいと思っていることが伝わってきました。そして、最初は実現不可能と思っていたわけですが、僕にとってもこんなチャンスはない。だったら具体的にアニメ映画化出来るか考えてみましょうという感じで企画に参加して行ったんです。そういうなかで、LOTRでも脚本に参加しているフィリッパ(・ボウエン)さんが本作の脚本を執筆することになりました。今回、僕は脚本を書かなかったこともあり、絵コンテは全部自分で切りました。

 本作の舞台になっているのは「二つの塔」から遡ること183年前の中つ国のローハン王国。セオデン王の先祖に当たるヘルム王の時代です。ヘルム王の血筋は彼で一旦途絶えていて、ヘルム王の姉(ヒルド)の息子フレーアラーフ、つまりヘルム王の甥っ子が王座に就くんです。たしか彼、「二つの塔」に名前だけは出ていたと思います。そこから血筋が変って行ってセオデン王につながって行く。本作はそのとき、183年まえに果たして何が起きたのかを描いています。トールキンの原作ではその記述は「追補版」にあるものの、日本語版で11ページくらいしかないんですけどね。ヘルム王はローハン国史上、もっとも強かった王様。戦士であり偉大な王だった。ヘルム・ハマハンドというあだ名で、日本語訳では槌手王(ついしゅおう)となっています。拳だけで敵を殴り殺すくらいの力をもっていたからです。ある種、自分の力を過信した部分もあるんだと思います。その王様の血筋がなぜ途絶えたかというのが原作のエピソードです。

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