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神山健治監督、フィリッパ・ボウエンが語る長編アニメ「ロード・オブ・ザ・リング」企画の経緯、ヘルム王の娘が主人公になった理由

映画.com / 2024年6月12日 14時0分

 とはいえ、そういう私であっても、アニメというアートは、息を呑むくらい美しいビジュアルとストーリーテリングが大きな魅力だという印象はもっていました。その時に、神山健治監督の作品を観て、とにかくビジュアルに大きなインパクトがあり、胸に迫るようなものを持っていると感じたんです。実際、一緒に仕事をしてみると、神山監督のストーリーテリングに対してのタックルの仕方がとにかくワクワクするものでした。私は、ピーター(・ジャクソン)と仕事をしているときと同じような感覚になりましたね。もうマスタフル(Masterful/最高の技能をもつ)な感じ。巨匠と一緒に仕事をしているような感覚になったんです。ではストーリーをどうするのか? ということになったときに、自分のなかではこれだというイメージがすでにあった。考えるまでもなかったくらいです。まずは自立した物語にしたかったし、いままで語って来た物語とつなげるというふうにはしたくなかった。とはいえ、いろいろ出てくるのは出てくるんですけどね(笑)。

――日本のアニメーションの魅力は?

 ファンタジーの素晴らしい作品もあるけれど、ザラザラと大地を感じるような、ひるむことのないストーリーテリングにグッと来ます。ヒーローもシンプルなヒーローではなく、必ず複雑な側面をもっていたりするし、女性のキャラクターも一辺倒ではなく深い何かがある。(本作では)パーソナリティが衝突し、個人的な葛藤が生まれ、そういうところが因果的なかたちになって、この物語を突き動かすことになる。ただのアクションではなく、人間の内面的葛藤が物語を突き動かし、大きな悲劇が物語を牽引して行く。そういうストーリーが日本のアニメのタッチにとても合っていると思いました。神山監督とプロデューサーのジョゼフに、じゃあ“ローハンの戦い”をやろうというと「いいね!」って。神山監督が惹かれたのは、ちょっと短所もあるヘルム王。子どもたちには愛はあり、それが彼の大きな特徴になっています。いまは命を吹き込まれた作品を見て、正しい選択をしたと思っています。アニメというフォーマットを選び、その第一弾としてパーフェクトな作品になったと確信しています。

――ヘルム王の娘、ヘラというキャラクターをどうやって膨らませたのですか? トールキンの原作では無名の彼女をどうして主人公にしたのですか?

 原作では、重要なキャラクターである娘であるにもかかわらず名前を付けられていないんです。彼女が求愛者を断ることで戦が始まるわけだから、とても重要なキャラクターなのに。ヘラは自分のなかに、このままがんばり続けられるだけの強さを見つけなきゃいけない。そういう意味では等身大なんです。私は、彼女をスーパーヒーローもののウォリアープリンセス・タイプにはしたくなかった。もっとリアルな人間にしたかった。彼女は母親がいないのでシングルファーサーで育ち、その父王が自分を深く愛しているのはよくわかっている。戦士である父に育てられたから自分自身もおてんばなところがあります。ところが、そうやって愛されているにもかかわらず、ほかの男兄弟のようには見てもらえない。自由であったとはいえ、王国の姫の伝統的役割である、誰かと婚姻するという道しか与えられなかったわけですから。そして、私の人生を誰かが決めていること気づき始めます。自分は、父や武将たちのローハンをかけた戦いのひとつのコマになるんだと気づき始めるんです。間違えることもあるけど、とても頭がきれて勇敢で、人民が大好きで父親を愛している、ヘラはとても魅力的で素晴らしい女性です。そして最初から凄い女性だったわけじゃない。素晴らしい戦士ではあるけれど、怪我もするし倒れることもある。決して楽な道を辿ってはいないんです。そういう彼女をリアルに感じて欲しいし、若い女性たちに共感してもらいたいと思っています。

――LOTRがファンタジーのスタンダードを変えてしまったように、このアニメも欧米のアニメーションのスタンダードを変えるかもしれないと思いませんか?

 個人的にはそうなる可能性があると思っています。神山さんはストーリーテラーであり脚本家であり監督なんですが、そのなかでもとりわけ、ストーリーテリングという才能にあふれた人だと思っています。そして、彼はやっぱりアーティスト。何がビジュアル的に美しいのかということもはっきり見えているし、音楽も大好きでこだわっている。本当に傑出した監督です。彼を実写界がアニメ界から盗まないことを願っています(笑)。本当に誇らしい作品、日本のアーティストたちが本当に素晴らしい仕事をしてくれて。彼らの創造性や力強さはマジで最高。本当にこの作品にかかわれてよかったと思っている。日本の観客と早く一緒にこの作品を観たいです。

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