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柴咲コウ、黒沢清監督との協働を振り返る “徹底的復讐”の現場に渦巻いた不安と期待【「蛇の道」インタビュー】

映画.com / 2024年6月15日 14時0分

 黒沢:なかなか言語化が難しいのですが、何も決めないわけではないんです。決めないと仕事にならないためいくつかのことは決めたうえで臨みますが、わからないものは決めようがないんですよね。事前に言っておくべきこと、こちらがわかっている部分に関しては伝えておいて、それ以外は「じゃあやってみましょう」という感じです。そのうえで不都合があれば変えますし、問題がなければOKですといった具合です。

 俳優の方もまったくの新人であればそれなりの不安の中にいらっしゃるかもしれませんが、柴咲さんはもちろんのことフランスの俳優たちも様々な撮影を経験されていますから「この監督はこれぐらいのことを言ってそれ以上は言わないんだな、こういう風にしているとOKが出るんだな」というのを察してくれて、じゃあそういうペースで行こうとなっていく気がします。

 柴咲:ただ私は、ずっと初心のままです。新しい空間に入って新しい監督の下で何カ月か撮るとなったら正解はありませんし、毎回フレッシュな気持ちで臨んでいます。だから25年以上続けてこられたんだろうなとも思いますし、そういった意味では新しい作品に入ればその都度また新しい不安がやってきます。

 黒沢:僕も不安はあるのですが、なんともいえない「どうなるんだろう」という期待でもあるように思います。誰も見たことがなく、やってみないとわからないことが生まれる瞬間は不安でもありつつ、「何かものすごく面白いことが起こるんじゃないか」という現場独特の高揚感でもあるのです。感覚的なものですが、俳優たちの表情やカメラマンと目を合わせたときに「いけた」という顔をしているように思うときはあります。ある種の手ごたえといいますか、それがあるから先へ進める――その繰り返しですね。

●「蛇の道」の空気感はどう醸成されたのか? 柴咲コウが明かす“黒沢組の特徴”

 ――本作を拝見した際に、例えば街の風景の中にも言いようのないおどろおどろしさを感じました。黒沢監督は「ダゲレオタイプの女」の際に現地のスタッフがスクリーン・プロセス(映像を投影したスクリーンの前で俳優が演じる手法。黒沢作品では車中のシーンで使われることが多い)の準備をして待ち構えていたとお話しされていましたが、「蛇の道」の空気感はどのようにして生まれたのでしょう。

 黒沢:今回のスタッフは「ダゲレオタイプの女」を経験しているメンバーも多く、僕がどういうものを狙っているのかをわかっていらっしゃっていたように思います。俳優の方たちも脚本があるため、残酷なことをしていないシーンでも緊張感を持っていてくれたように思います。そして小夜子を筆頭に、本作のキャラクターはみんな裏がある。言っていることと考えていることが裏腹である雰囲気をもって、相手と探り探り関係性を構築していくということを皆さん承知して芝居をされていたのではないかと思います。

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