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【特別対談】山田尚子×新海誠が語り合う、創作論から監督ならではの悩みまで――

映画.com / 2024年8月30日 12時0分

 新海:僕からすれば、自分が原作ものをやったことがないこともあり、そちらの方が怖いです。山田さんは原作を壊さないような、或いはさらに魅力が増すようなお仕事をずっとやられてきて、山田さんが作ることで原作のファンがさらに膨らむことをずっと重ねてきた凄みを感じます。自分に経験がないため、未知の恐怖を感じますね。

――先ほど新海監督がお話しされていた「公共事業」は、オリジナルと結びつく思考の気もしました。ゴールを自分たちで設定できる自由度があるといいますか。

 新海:そうかもしれません。どこにも存在していなかった巨大な建築物のようなものを作っている感覚があります。ねじの締め方やどういう材料で作るか、外観も含めてまだこの世に存在していないものを創り上げるロマンがあります。今は、完成するフィルムはデータですから形こそありませんが、気分としてはそういった思いがあり、それがオリジナルを作る醍醐味ではと思います。

 山田:「きみの色」を経験して、それがよくわかりました。オリジナル気質ではないと言いつつ、この作品が世に生まれた感動をものすごく感じて、「これは癖になるだろうな」と思いました。

――「きみの色」の企画は、「音楽ものをやりたい」が出発点だったと伺いました。山田監督は「けいおん!」「リズと青い鳥」と音楽モチーフの作品を多く手掛けられてきた印象があるのですが、全く違うジャンルではなく重ねたのはなぜでしょう。

 山田:オリジナル作品を劇場映画として作ることにプレッシャーを感じすぎてしまい、自分が地に足を着けて取り組める題材で描きたいなと思ったんです。無理して大きな話にチャレンジする必要はないんじゃないか、と考えたとき、「音楽を奏でる人たちの作品が作りたい」というものが出てきました。嘘をつかず、カッコつけず、やりたいことをシンプルにやりたいですと言おうと思った結果です。

 新海:「きみの色」を観て好きな瞬間はたくさんありましたが、中でも一番好きなのは文化祭でライブをする直前のシーンです。演奏を控えて「ライブなんかしてよかったのかな」と緊張しているきみちゃんに、トツ子が「何言ってるの、そんなやる気満々の格好して」というシーンがありますよね。きみちゃんが身を起こすと、確かにファッションはロックにびしっと決めている。コミカルでキャラへの愛情溢れる素敵な処理だと感じたんですが、こうやって山田さんのお話を聞いていると、ご本人にもそうした複雑な可愛らしさを感じます。

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