1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 芸能
  4. 映画

【特別対談】山田尚子×新海誠が語り合う、創作論から監督ならではの悩みまで――

映画.com / 2024年8月30日 12時0分

 新海:特にテクニックとかはなく、むしろ出演者の皆さんに聞いてみたいくらいです。たとえば、山田さんを紹介してもらったのは入野自由さんなんですが、入野さんは僕の「言の葉の庭」と山田さんの「映画 聲の形」に出演されているので、僕と山田さんどっちが好きなのか聞いてみたいです(笑)。

 山田:確かに(笑)。今回の対談に際して、新海さんに会えるからと「言の葉の庭」を見返したら入野くんの声がしてきて、どっちがいいところを引き出せるのかは気になるところです。でも「言の葉の庭」の方が先だからな……。

 新海:入野さんには「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」のキャラクターデザインの田中将賀さんも紹介してもらって、そのご縁で「君の名は。」に参加していただいたんです。そう考えると、実は全部入野さんがコントロールしているのかもしれない(笑)。

 山田:そうかもしれません。彼がすべてを握っている(笑)。

――先ほどのお話にもありましたが、山田監督は「観客を信じる」を信条にしていらっしゃいますよね。その部分、新海監督のお考えをお聞きしたいです。

 新海:山田さんのそういった言葉や、キャラクターの実在を信じて誠実に撮っていく眩しさにいつもハッとさせられる反面、どうやったらそれが可能なのか僕は未だにわかりません。観客のことはもちろん大切だし信じてもいますが、「この表現が観客に伝わるかどうか」を考えたときに、伝わらないかもしれないリスクを考えてしまい、そういった表現を回避する方向にいってしまうことがあります。だけど、山田さんは観客を信じているからこそ説明描写などを削り取ってよりピュアなものにできるのだと感じています。僕自身には真似する度胸もできないのでその根拠が山田さんのどこにあるのか気になっています。

 山田:自分が映画を観るときの気持ちに帰ってきている気がします。自分は映画と勝負したいし、能動的に楽しみたいタイプ。止ませたり考えさせてほしいという気持ちが昔からあるのですが、たくさん答えがあるほうが観やすかったり親切で心を動かせたりするようなとは思いつつ、今話したような映画体験も肯定したくて踏ん張っている感じです。「こういう映画があってもいいのではないでしょうか」という気持ちです。

 新海:それはすごく勇気がいることだし、周りも説得しないといけませんよね。だから山田さんはタフな人なのだと思います。お酒を飲んでいてもずっと変わらないし、体幹の強さを感じます(笑)。

 山田:道産子といいますか、土地に根付いた感じですね(笑)。そう言っていただけて、とても有り難いです。新海さんは私にレッテルを張らずに観てくださるイメージがあるので、凄く助かっています。

 新海:いえいえ、本当に数少ない監督の友人のおひとりですから。対談のお話をいただいたときに、山田さんとだったら――という気持ちはありました。

 山田:本当に嬉しいです。冒頭にお話しした通り、新海さんには苦情ばかり言っているのですが(笑)、こうやって作品について話す機会はなかなかないですから。こうやってお話して、私が新海さんの作品をどう見ているのかが自分で分かった気がしました。貴重な機会をありがとうございました。

 新海:僕も山田さんの作品を観ていて「ここ良いな、真似したいな」と思うところは色々とありますが、こういう機会でもないとなかなか言語化できないので、こちらこそありがとうございました。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください