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今年の上海国際映画祭を振り返る 作家性の強い日本映画に反響、メジャー映画には危機感【アジア映画コラム】

映画.com / 2024年9月6日 9時0分

 ところが、日本映画に関しては、良いニュースだけではありません。

 今年の上海国際映画祭のチケット販売状況を見ると、少し危機感を感じています。数年前であれば、メジャーであろうか、インディーズであろうか、上海国際映画祭で上映される日本映画であれば、どの作品でも「チケット売り切れ」が当たり前でした。しかし、昨年からその状況が変わりつつあります。

 中国の観客の“日本映画に対する好奇心”は、ここ2、3年で少し弱くなっているのかなと思っています。特にメジャーの商業映画に関して、昨年から売れ行きが鈍化。以前は売り切れるような作品でも、最終的には完売とはならないことが増えてきています。そして、今年は、その傾向がさらに強くなったと感じました。

 メジャーの日本映画は、どんなに有名な俳優が出ていても、なかなか話題にならず、最終的には空席が目立つ状況に。おそらくメジャーな日本映画に対しての“新鮮味が薄れている”のではないでしょうか。さらに言えば、日本のメジャー映画は、全世界の映画業界の傾向と比べると、少しズレが生じているようにも感じています。

 その一方で、作家性の強い日本映画は、非常に反響が良かったんです。今年生誕100周年となった増村保造監督は、上海国際映画祭初の特集上映を実施。これまでなかなか紹介される機会が少なかった増村監督は、今回の映画祭特集で非常に話題となり、上映本数6作品の“合計20回以上の上映”が、ほぼ毎回満席となり、観客からも高評価の声があがっていました。今後中華圏における増村監督への注目度は、ますます上がるに違いないでしょう。

 そして、山中瑶子監督の最新作「ナミビアの砂漠」も上海国際映画祭でアジアプレミア。中国の映画評論家から絶賛されていますし、山中監督は間違いなく、今後アジアで最も注目される新鋭監督になるはずです。

 また、前田哲監督の「九十歳。何がめでたい」は観客から非常に支持されており、今回の上海国際映画祭における新作日本映画の中で“最も評価された1本”となりました。これからの中国でも高齢化問題、高齢者の生活に目を向けないといけないということで、共感の声が多かったのだと言われています。

 コンペティション部門に入った呉美保監督の最新作「ぼくが生きてる、ふたつの世界」は、残念ながら受賞には至りませんでしたが、マスコミの評判も、観客の評判も良く、コンペティション部門作品の中で最も良質な口コミが集まった作品でした。

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