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【世界の映画館めぐり】モロッコ、ベルトルッチやジャームッシュらを惹きつけたマジカルな港町タンジェ

映画.com / 2024年10月17日 21時0分

 そして、この映画の音楽を手掛けた坂本龍一さんによる、もの悲しくも美しいテーマ曲が同時に脳内で再生されます。映画館目当てで訪れたこの街で満月を見られたことは、一生忘れられない思い出になるだろうな――そんなことを考えながら歩いた、ひと気の少ない真夜中の旧市街は「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」の吸血鬼カップルが歩いていた景色そのもの。自分が映画の中にいるような神秘的なシチュエーションにめまいがしそうなタンジェ初日、「あなたが今日最後のお客ですよ」と、日付が変わる頃まで筆者の到着を待っていてくれた、小さな古いホテルの老館主の声がなぜか心地よく、深い眠りにつきました。

■映画にも登場する古い劇場「Cine Alcázar」

 そして翌日、メディナやカスバと呼ばれる、城塞に囲まれ、小道が迷路のように入り組むアラブ文化独特の旧市街を散策します。日中は各種小売商店もオープンし、夜の静けさとは打って変わってとてもにぎやか。白壁に色鮮やかなペイントが施された美しい住宅にも目を奪われます。スマホ地図検索なしで、心の赴くままに街を歩いていたら「シェルタリング・スカイ」でも「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」でも印象的に映し出される古い映画館、Cine Alcázarに到着しました。

 Cine Alcázarは1913年に劇場として開業、その後1917年から映画上映が始まったという歴史ある映画館です。現在はTanjaflamというモロッコの文化活動を支援する団体が運営しており、きれいにリノベーションされた館内にはモロッコを舞台とした古い映画ポスターやかつて使われていた映写機、フィルム缶などが展示されています。今はDCP上映対応で、地元の学生たちを対象としたシネクラブも開催されているそうです。

 Cine Alcázarのラインナップは、ハリウッド映画をはじめ各国の新作をメインに、新旧の話題作2~3作を1日1回上映するスケジュールのよう。筆者が訪れた日は、なんと、10月3日に配信が開始したばかりの日本のアニメーション「ダンダダン」の一場面を用いたプログラムが配布されていました。9月にこの映画館での上映があったようで、スクリーンで見られたタンジェの方々はラッキーですね。残念ながら私は時間が合わず、現地で公開されたばかりの「ビートルジュース ビートルジュース」を鑑賞。料金は35ディルハム(約530円)。平日の夕方帯、数人の若い観客のグループがいました。モロッコの公用語はアラビア語ですが、英語の本編に、かつてのもうひとつの公用語だったフランス語字幕での上映でした。スペインにほど近いということもあり、タンジェ街中は、若者もお年寄りも複数の言語が話せる人が多い印象を受けました。

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