【世界の映画館めぐり】モロッコ、ベルトルッチやジャームッシュらを惹きつけたマジカルな港町タンジェ
映画.com / 2024年10月17日 21時0分
映画を観終わるとCine Alcázarのほど近くで、「シェルタリング・スカイ」で使われたと思われる古いカフェを偶然発見しました。基本的にモロッコのカフェでお酒の提供はありませんが、日本の場末の酒場のようにシニア男性客であふれています。異邦人の女である私が一人で入ったら、映画のようなその雰囲気に飲み込まれて「シェルタリング・スカイ」の主人公キットと同じく、日本の日常生活に戻ってこれなくなってしまいそうだったので、今回は遠くから店内を見つめるだけにとどめました。
■おしゃれなカフェが併設されたアートハウスシアター「シネマテーク・ドゥ・タンジェ」
9月下旬のタンジェは、残暑や台風などに見舞われる日本よりも涼しく、湿度も低く、街歩きにはうってつけの気候でした。筆者はきらめく陽光と穏やかな青い地中海を臨む美しい街並み、港町特有の様々な人が出入りする活気あるコスモポリタンな街の雰囲気が気に入り、そしてたまたま「Tanjazz」と名付けられた音楽フェスも開催されていたことから、当初の予定を延長して4泊もしてしまいました。次に訪れた映画館は、城壁の外の広場に面したCinéma Rifの中にあるシネマテーク・ドゥ・タンジェ(Cinémathèque de Tanger)
です。
フランスのラジオ番組francecultureでの同館のインタビューによると、シネマテーク・ドゥ・タンジェは、1938年に開館した古い映画館Cinéma Rifを、モロッコ人アーティストらが買い取り、フランス人建築家が改修、2007年に開館した北アフリカ初のアートハウスシアターとのこと。大小二つのスクリーンのほかに、オープンカフェを併設した施設です。世界各地の映画と、毎月モロッコ、アラブ、アフリカの映画を上映し、タンジェの文化施設として機能しているそう。国からの援助は受けず、チケットとカフェの売り上げ、スポンサーからの財源で運営されています。
モロッコの古いカフェは、のんびりミントティーを味わう地元のシニア男性御用達といった店が多いですが、こちらは老若男女、観光客も多く、女性一人でも気軽に利用できます。フランスのファッションデザイナーで、映画監督のアニエス・ベーも運営に協力しているそうで、館内のデコレーションはもちろん、配布されるプログラムから、トイレに至るまですべてがおしゃれ。パリのミニシアターのようでもあり、モロッコならではの美意識も感じられる洗練された空間です。
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