役所広司×内野聖陽が語り合う“表現者”の葛藤と欲望――滝沢馬琴&葛飾北斎役で辿り着いたもの【「八犬伝」インタビュー】
映画.com / 2024年10月26日 11時0分
――予告編でも出てきますが、馬琴の背中を机の代わりにして北斎がその場で絵を描く姿が非常に印象的でしたが、あれはもともと脚本には…?
役所:いやいや、ト書きにはそこまで書いてなかったよね。あの場にお百(馬琴の妻/寺島)が来て「ジジイが朝っぱらから――」というセリフがあるので、なるべく近いほうがいいだろうと。そこで背中を使うことになったんですね。
内野:そうですね。役所さんの方から「ジジイが2人、なんか変な態勢でいたら面白いんじゃないか?」という提案があって、いつのまにかああなっちゃいましたね(笑)。
あの構図ってすごく絵を描いてほしい馬琴と「描いてやるもんか」という北斎の関係性が見事に現われてますよね。支配する側と「描いてくれるなら何でもします」という側のM的な感じがあって、面白いですね(笑)。
●“表現する者”を演じる面白み
――お2人ともこれまで武将などの歴史上の人物は数多く演じてきましたが、特に今回のような芸術家、表現者を演じるという部分で面白さを感じるところはありますか?
役所:やっぱり憧れますよね、何かをやり遂げた人というのは。魅力的な人物でなければそこまでのことはできないだろうし、家族や友人といった周りの人たちがいたからこそできた部分もあるし、一方で馬琴も家族を犠牲にしてもいますよね。
ものをつくる人間が没頭してなりふり構わずやっているという部分には憧れますね、表現者の端くれにいる者として。
内野:僕は今回、北斎に出合ってよかったなとすごく思っていて、彼は社会的にはやっぱり、いびつな男ですよ。引っ越しを100回ぐらいしたという話もありますけど。死ぬ前までも絵が上手くなりたいとか言って、絵に対して全生命力をかけて、ひたすら人を楽しませて、驚かせてやろうと生きてきた人ですから、本当にバイタリティを感じるし、実際、87歳で描いた絵を見ても、ものすごい気迫を感じるんですよ、「何なの?このエネルギー…」って。
その端くれの端くれにいる表現者としては、北斎のバイタリティには本当にパワーや勇気をもらえるという気がしました。こうやっていつまでも向上心を持ち続けられるって素敵だなと思いましたね。
――現代でもクリント・イーストウッド(94歳)や山田洋次監督(93歳)のように、クリエイティビティや創造意欲が衰えるどころか、むしろ年を重ねて表現の幅や深みが増しているんじゃないか?というクリエイターもいらっしゃいます。お2人も若い頃と比べ、年齢を重ねる中で、表現・創作意欲が増してきていると感じることはありますか?
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