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役所広司×内野聖陽が語り合う“表現者”の葛藤と欲望――滝沢馬琴&葛飾北斎役で辿り着いたもの【「八犬伝」インタビュー】

映画.com / 2024年10月26日 11時0分

 役所:まあ僕ら俳優の場合、魅力的なお話が来るのを待っている立場でもあるので、いつも良い作品、役に出合いたい、素晴らしい監督や共演者と巡り会いたいという気持ちではいますけどね。

 自分でゼロから何かを生み出すというよりも、来た仕事を頑張って、それを見てくださった方が「こいつを使ってこういうことやってみたいな」と思っていただければいいなという気持ちですね。出会いを楽しんでもいるし、何しろ絶対に一人では何も生み出せない仕事ですから。集団の中のひとつの駒としてうまく機能するというのが楽しいんですよね。

 内野:ちょっとご質問の趣旨とは離れるかもしれませんが、若い頃って、どちらかというと、自分の脳みその中で考えた形で展開させようとする気持ちが強かったりしたんだけど、年を食っていくと、徐々に“開いてくる”というか、いろんなものを取り込んで、もうそんなにひとりで力まなくてもいいじゃねぇかっていう気持ちが強くなるんですよね。

 年を取って身体は衰えていくんですけど、心のスタンスが広くなるような気がしているので、それがうまく表現にも乗ってくるといいなという思いはありますね。若い頃よりも取り込むものが多くなっている気がします。脳内だけで考えがちだったのが、貪欲に取り込んで援用できたらいいのかなと。

●“奈落”での問答について「演じながら『これは永遠のテーマなんだな』と思っていました」

――劇中で、2人が「東海道四谷怪談」を観劇し、舞台裏の奈落で鶴屋南北(立川談春)と虚と実について議論を交わすシーンも印象的でした。“虚”の世界で理想や正義を追究しようとする馬琴と、“実”の世界は残酷で必ずしも正義が勝つわけでないからこそ、そんな世界をおちょくるような物語を描こうとする南北。どちらの思いにも共感させられ、考えさせられます。

 役所:あれは台本を読んだ時から面白いシーンになるなと思っていました。この仕事に携わっている人間としては、南北のつくる世界に参加してみたい思いもあるし、馬琴の描く正しき者が報われる世界というのも王道で魅力的に感じますよね。

 (馬琴の世界は)美しくはあるけど、そればかりでは面白味がなくて飽きてしまうので、南北の毒のある世界に身を投じてみたい思いもあるし……でも結局、行き着く先は、どちらも正しきものが報われる世界というものを感じてもらえるんじゃないかと思います。表現の仕方の違いなんですよね。演じながら「これは永遠のテーマなんだな」と思っていました。

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