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「石板のように映画を残したい」川上さわ監督、20歳での初長編作「地獄のSE」インタビュー

映画.com / 2024年10月27日 8時0分

「石板のように映画を残したい」川上さわ監督、20歳での初長編作「地獄のSE」インタビュー

取材場所:ポレポレ東中野(撮影:兒崎七海)

 初監督作「散文、ただしルール」がカナザワ映画祭2022「期待の新人監督」にてグランプリを受賞した川上さわが、20歳の時に撮った初長編映画「地獄のSE」が公開された。

 海辺の町を舞台に、中学生たちの青春や複雑な心象を特殊画面や字幕、アニメーションなどを用いて独創性あふれる映像で描きだす。本作を「類を見ない怪作」と絶賛するポレポレ東中野スタッフの小原治氏がその謎に迫るべく、川上監督へのインタビューを敢行。その全文を映画.comが入手した。

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 映画は様々なレイヤーを経由して初めて観客の中にうまれおちる。川上さわ監督の劇場デビュー作「地獄の SE」もまた様々なエキスの複合体であり、その一つ一つに映画表現の新しい接触面を開拓している。(インタビュー&構成:小原治/撮影:兒崎七海)

小原:映画を撮ることに至った経緯をお聞かせください。

川上:もともと興味があったのは詩でした。ただ私は詩の世界は好きだけど、詩を読むことが上手くなかったので、そうじゃない詩のあり方を考えていた時期に映像詩というものがあることを知り、ジョナス・メカスの「リトアニアへの旅の追憶」を見ました。これまで見たことのない映像に衝撃を受け、映画というものに本格的に興味を持ち、大学も映画の制作だけではなく原理や思想が勉強できるところがいいなと思って今の立教大学の映像身体学科に入りました。岡山から上京したその年の4月に初めて行った東京の映画館がポレポレ東中野で、その時にレイトショーで見たのが山中瑶子監督の「あみこ」でした。

小原:初めてメールをくれた時も、「『あみこ』を見て、私も早く映画を撮らなきゃって気持ちにさせてくれました」と書いてくれてましたよね。「そう思わせてくれた映画館」とも。うれしかったです。

川上:はい。新作「ナミビアの砂漠」を見てもそう思いました。あとは大学一年の授業でロベール・ブレッソンの映画を全作見たことも大きかったです。ブレッソンの映画って何も起きないなと思って見ているにつれて実は何かが起きまくっていると思えた感覚がすごくうれしくて。その授業が終わった後、すぐ映画を撮りました。

小原:それが「散文、ただしルール」ですね。しかも冒頭がキャシー・アッカーの言葉で始まったのでびっくりしたけど、この映画のおもしろさの理由もそこにちゃんとあって。

川上:端的な理由としては文字から始まる映画が好きなんです。最初に言葉があって、そこから映画世界との異化作用により派生していくもの、広がっていくものを示そうとする意図はありました。アッカ―の「Pain in the world. I don’t have anywhere to run」の次に主人公のカットがつながることで走り出す映画世界があると思って。私はゼロから新しいものを作ろうとすることが苦手で。説明がないとわからないタイプだから。

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