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「天保十二年のシェイクスピア」で浦井健治の挑む醜い悪党が「まるで無理しなくていい役だった」という衝撃!【若林ゆり 舞台.com】

映画.com / 2024年12月10日 10時0分

「天保十二年のシェイクスピア」で浦井健治の挑む醜い悪党が「まるで無理しなくていい役だった」という衝撃!【若林ゆり 舞台.com】

撮影:若林ゆり

 もしもシェイクスピアがいなかったら? そんな歌曲から始まる祝祭音楽劇「天保十二年のシェイクスピア」は、日本を代表する劇作家、井上ひさしが約50年前、シェイクスピアに真っ向から挑んだ意欲作だ。舞台は幕末へと向かう混乱の江戸時代。侠客の闘争を描いた人気講談「天保水滸伝」を軸に、シェイクスピア37作品の要素を巧みに取り込み、濃厚な人間悲喜劇として見事に描ききった、井上渾身の傑作戯曲である。

 この戯曲が演出家、藤田俊太郎により新たな生命を吹き込まれたのが2020年。シェイクスピアの「リチャード三世」にあたる悪党「三世次(みよじ)」役を高橋一生が演じて大評判となったが、コロナ禍で東京の3公演と大阪公演が中止となってしまった。

 その藤田版「天保十二年のシェイクスピア」が、この12月に再び幕を開ける。今回の三世次を演じるのは、4年前には「ハムレット」や「ロミオ」を背負った「きじるしの王次」役で出演していた浦井健治。役を替えての大きな挑戦をする浦井に、話を聞いた。

「正直、最初はすごく驚きましたし戸惑いもありました」と、浦井は「三世次役に」と言われたときの心境を明かす。「この作品で三世次をやらせていただくなんて夢にも思っていませんでしたし、『自分にできるのか』と。かなりの覚悟が必要でしたが、これほど役者冥利に尽きることはない。やらせていただくと決めたからには自分のすべてを懸けてやりたい、という気持ちがどんどん強くなりました」

 いざ役に向き合ってみると、浦井は自分に「不思議な現象」が起こっていることに気づく。

「前任者である高橋一生さんの声と、ミザンス(立ち位置)と、抑揚と、テンポも含めた芝居が全部、自分の中に入っているんです。(藤田版)初演のときには稽古場でも本番中もずっと見ていたし、すごく憧れでもありましたし。耳の中、頭の中に響いている。それでセリフを自分が発する時にも、記憶の中の演技をなぞりそうになるんです。そのことに最初は焦りも感じましたが、ある瞬間から『一生さんの芝居をなぞったとしても、それが芸事として成立するからいいんだ』と思うようになりました。自分を通して出していけばもちろん違うものにはなる。でもどこか一生さんに似ている、というような役になっていると思います」

 三世次はリチャード三世のみならず、「オセロー」のイアーゴーや「ジュリアス・シーザー」のブルータス、「マクベス」「ハムレット」などの要素を混ぜ合わせ生み出された “ザ・悪徳”のような人物だ。生まれ育った境遇と不運によって顔に火傷を負い、片足が不自由となり背骨が曲がり、しかも宿無し。八方塞がりの彼は言葉を操り、世の中を混沌に陥れることで生きる場所を得ようとする。

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