「CHANEL and Cinema TOKYO LIGHTS」ティルダ・スウィントンが語る、“つながり”の重要性とフィルムメイカーとしてのキャリア
映画.com / 2024年12月30日 16時30分
■作家を夢見ていた10代、デレク・ジャーマンとの仕事とフィルムメイカーとしての歩み
自身を俳優ではなく、フィルムメイカーと定義するティルダ。その理由として、まずは、デレク・ジャーマンとの日々を回想する。「9年間一緒に仕事をしたデレク・ジャーマンが1994年に亡くなったとき、私はどうしたらいいのかわかりませんでした。というのも、映画制作というと、私はただ、彼と仕事をしている自分の姿しか思い浮かべることができなかったからです。私は演技の勉強をしたことはなく、俳優になりたいと思ったこともありません。私が出会った多くの俳優は、自分のテクニックに自信を持ち、その技術を武器にあらゆる環境に自らを投じていますが、私は彼らとは違い、映画とは仲間と一緒に作るものだという意識を持っているので、デレクという仲間を失った時に、自分が映画を作り続けられるかわかりませんでした。しかし、年月が経つにつれて、奇跡的に共に家族のように仕事ができる他の仲間を見つけることができたのです」
幼いころは作家を夢見て、10代は詩を書いていたが、ケンブリッジ大学入学後に「自信を無くし」詩作をやめたと明かす。その後、大学での演劇のプログラムに参加する中で、脚本家の友人らと知り合い、「映画制作のプロセスの中に自分の居場所ができるなんて思いもしなかったし、フレームの中に入るという発想もなかった」ものの、映画の世界の一部になりたかったという強い思いが叶い、その後映画制作の道に進んだ。
「おしゃべりな映画にはあまり惹かれない」という。デレク・ジャーマンとのスーパー8での制作を通し、「セリフはなく、存在感と動き、カメラ、フレームを理解することがすべてで、重要なのはセリフやシナリオではなかった」と、カメラの前に、ただいることの重要性を体感した。「カメラの前にいることは、私にとっては詩作と何らかの関係があります。それがどういう意味なのか説明はできないのですが、‘雄弁に語る必要性がない’ということが持つ、エキゾチックな魅力と関係しています。それは私にとって自由な場所であり、まさに詩を書く感覚に近い、自分を説明する必要のない自由な場所なのです。ただ存在すればいい、そういう始まりでした」
ジャーマンと9年間で7本の映画を制作し、「プロフェッショナルでない、ポジティブな意味でアマチュア的な仕事の仕方を身につけました。私たちはアートキッズで、商業映画界とは無縁でした。それでも、とても力があったし、お金がなかったから好きなことができました。誰にも指図されなかったから、大人たちのために何かを考え出す必要もなかった」と自主映画からのスタートが現在まで大きな影響を与えている。アカデミー衣裳デザイン賞を受賞しているサンディ・パウエル(「オルランド」)、音楽家のサイモン・フィッシャー・ターナーらの例も挙げ、ティルダと同様にデレク・ジャーマンの現場からキャリアを築いていったと話す。
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