「CHANEL and Cinema TOKYO LIGHTS」ティルダ・スウィントンが語る、“つながり”の重要性とフィルムメイカーとしてのキャリア
映画.com / 2024年12月30日 16時30分
長年キャリアを積み重ねるも、「自分の演技の役作りのテニックやメソッドようなものはない」という。「好奇心の金庫のようなものがあって、そこから自分の周りにいる、私をしっかりと支えてくれる海中の錨、ロープのような、実在の人物を探し出すのです。そうすることで、私はその慣れ親しんだ感覚に身を置くことができ、リラックスすることができます」という。自身の母親の話し方や仕草をデフォルメして演じたり、「グランド・ブダペスト・ホテル」では、自身の祖母の口紅の塗り方や態度など細部をモデルにして生かしたという。しかし、「最近、私は違ったやり方でも役作りをするようになりました。自分自身の興味、感覚、経験などをを用いて、自分自身を役柄に反映させるのです。そうして生まれるものはとてもオーセンティックで、このやり方も面白いなと思っています。」と考え方の変化も楽しんでいる。
■映画界の巨匠とは 言語に頼らない演技の重要性
ジム・ジャームッシュ、ポン・ジュノらともに仕事をした監督たちの名をあげ、「私が言うところの巨匠とは、彼ら独自の雰囲気、世界観を作り出しているという意味です。毎回同じ映画を作るという意味ではなく、ひとつの宇宙を作り上げていること」と定義する。そして、短編「ヒューマン・ボイス」と、今年、第81回ベネチア国際映画祭の金獅子賞を受賞した「ザ・ルーム・ネクスト・ドア」にティルダが出演したペドロ・アルモドバル監督は、ティルダが考える巨匠の定義において「傑出している」と言う。「彼の23本の映画は大きな書物であり、それぞれの映画は1つの章だと言えるでしょう。繰り返し使われるモチーフがあり、色彩がある。そして彼の住む場所に訪れると、実際に映画の中に登場した芸術品や家具がある。つまり彼は自分の映画の世界そのままの中で生きているのです。そんな彼の世界を知り、そこの入り込むことは得難い体験」と説明する。
もう一人の巨匠として名を挙げたタル・ベーラ監督の「倫敦から来た男」でのエピソードから、3人の演者ががチェコ語、ハンガリー語、英語でけんかをするシーンについて触れ、「何語で怒鳴っているかは関係ありません。同じ言語を話していないほうが良いくらいでしょう。なぜなら、同じ言語ではないので、理解したり聞いたりするふりをする必要さえないからです」と、3者の感情のみがカメラでの前で表現されていたと指摘。「私にはそれがとても興味深く、何度もそのことを考えました。他の言語で仕事をするときに必要なのは、エネルギーを正しく表現することです。ヒッチコックは、カメラが物語を語り、セリフは設定されているだけだと言っていました。基本的に物語を語るのは言葉ではない。それは人生にも当てはまります。人はどれだけ頻繁に本音を言葉にするでしょうか?」と、問いを投げかける。
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