死を想って48歳で初めてのセックスを体験する主人公の孤独が美しい「ブラックバード、ブラックベリー、私は私。」【二村ヒトシコラム】
映画.com / 2024年12月30日 21時0分
(C) - 2023 - ALVA FILM PRODUCTION SARL - TAKES FILM LLC
作家でAV監督の二村ヒトシさんが、恋愛、セックスを描く映画を読み解くコラムです。今回の作品は、ジョージアの新進女性作家タムタ・メラシュビリの大ヒット小説を原作に、新しい人生を踏みだそうとする中年女性の日常をオフビートに描いた異色の青春ドラマ「ブラックバード、ブラックベリー、私は私。」。二村さんは、自立した人生を送る主人公の「孤独の自由さと美しさが描かれている」と語ります。
※今回のコラムは本作のネタバレとなる記述があります。
あんなふうに処女が一瞬で発情し、そして騎乗位で初体験するなんてこと現実にありえるんだろうか。ありえるんでしょう。この映画は女性の性欲を(も)あつかってはいるが、男が思い描く女のセックスについてのファンタジーではない、現実的な映画だから。
主人公エテロは大きな黒い鳥のような、いかめしい顔をしている。表情はゆたかではない。本人にはそんなつもりはないのだろうが他人をちょっと怖がらせそうだ。そんなエテロが48歳で初めてセックスをした。それから恋愛をした。それまでは彼女は孤独だった。だが、恋愛によって彼女は孤独ではなくなり元気になって外見がなんだか前より少し美しくなったのでした皆さん感動してください、みたいな凡庸な映画ではない。この映画は恋愛を礼賛していない。
▼エテロの孤独の、自由さと美しさが描かれている映画
現実的な映画だが、とても美しい映画でもあった。何が美しかったのか。孤独が美しかった。この映画ではエテロの孤独の、自由さと美しさが描かれている。セックスも恋愛もすばらしいことだが、たかがセックスや恋愛を楽しんだくらいでは人間の美しい自由と孤独は失われない。孤独な自由は屈強なものだ。そして孤独も自由も、強くならざるをえなかった人間の強い感情が作りだす立派なものだ。
もっと言うと、ちゃんと自分の家族のトラウマや周囲の無理解や未来の死をみつめて、さみしさを味わい日々を楽しみつづけている気合いの入った人にしか、ほんとうの意味でセックスや恋愛を楽しむことはできないのだなとも僕はこの映画を観て思った。エテロはついこのあいだまで処女だったのに、いまや(彼女は無口なので、あまりそうは見えないかもしれないが)めちゃめちゃ恋愛やセックスを楽しんでいる。そして、ここが重要なのだが、恋愛やセックスにのめりこんで心を殺されてはいない。
すがるような、愛を乞うような気持ちを男にむける女は(そういう気持ちを女にむける男も、そういう気持ちを同性にむける同性愛者も)まったく魅力的ではない。自由ではないからだ。エテロは魅力的だ。僕は彼女に性的な魅力を感じた。性的魅力というのは必ずしも外見の美しさによるものではないと(僕にとっては)証明されました。
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