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「他者との関係によって、彼という人物は形成された」アリ・アッバシが追求する“人間”ドナルド・トランプの変容

映画.com / 2025年1月19日 9時30分

――本作はニクソン政権からのアメリカと、資本主義の変容についての映画でもありましたね。アメリカ人ではない、外側の人間であるアッバシ監督がその歴史を紐解く中で、アメリカという国家をどのように捉えましたか?

 本作を手掛け始めた頃、私は脚本家のガブリエル(・シャーマン)と製作総指揮のエイミー(・ベア)の3人で、このゼロサムゲームについて話し合いました。アメリカでは勝者がすべてを手に入れ、敗者には何ひとつ残りません。私はこのシステムの源流にあるのは、物事に対処する本能的な方法なのではないかと思うんです。たとえば、誰かと戦って倒したらすべての食べ物を勝者が奪い取る、という原始的な時代がどの国でもあったように。ですがそこから文明は発展して「絶対的な勝者が一人だけだと何千人もの敗者が生まれ、社会にとって良いことではない。人々があらゆるレイヤーで勝ち負けをする社会の方が健全だ」と気付き変化し始めます。

 しかし、アメリカはゼロサムゲームのシステムに固執し、それが社会基盤となっているように思えるんです。なぜなら、アメリカでは勝たなければ何も手に入らないから。そうなると人々にとって「勝利」こそが唯一の使命となり、何よりも重要なことになります。そして、勝つためには手段を選ばなくなってしまいます。彼らの経済や、法制度、選挙制度を見ればそれは明らかでしょう。今回の大統領選でトランプが当選したことは、その最たる例だと思います。彼には数多くの重罪や不正行為、告発や問題がありました。しかし彼が当選した途端、それらがすべて魔法のように消し去られたのです。つい先日も彼が有罪評決を受けている裁判で、“無条件の放免”という異例の判決が下されました。判事は「あなたは重罪犯ですが、2期目の大統領を頑張ってください」と告げたのです。

――1月10日にニューヨーク州地裁で下された判決のことですね。重罪で有罪となっていたが、刑罰は科さないという。

 そうです。また、我々はこの映画で70年代末から80年代という、特定の興味深い時代のことを描いています。日本も高度経済成長後で、経済大国として世界に台頭した時代でもありますよね。トランプは、1987年にニューヨーク・タイムズとワシントン・ポスト、そしてボストン・グローブに「他国のために金を使うな」とレーガン政権を批判する全面広告を掲載します。彼はその頃からアメリカ・ファースト(米国第一主義)を訴えていたのです。80年代に彼は「日本はアメリカで自動車を売りまくっている。我々はぼったくられているんだ」と述べていました。そして現代では日本は中国に置き換えられ、ドイツはメキシコに置き換えられていますが、彼が述べる構造は変わっていません。

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