日仏の味覚が一皿に。フランス大使館で開催された一夜限りのオートクチュール晩餐会【イベントレポート】
FASHION HEADLINE / 2015年12月31日 20時0分
ニ皿め(Entree)「冬の日本海の恵「香住産セイコ蟹」外子と内子を下敷きに、柿なます、胡麻クリーム和え、振り柚子 黄柚子の割山椒の器で」/吉兆、「毛ガニにブイヤベースの繊細なジュレとクリームを添えて」/仏大使館・SEbastien MARTIN
庭の木々の葉の紅さが盛りを迎えた、12月11日のフランス大使館。これまでにない和食とフランス料理のコラボレーションディナーが開催された。
この特別な会が立案されたのは約2年前。フランス大使館の協力を得て、日本の食文化を海外へ発進するイベントの一環として三越伊勢丹ホールディングスが企画した、過去に例のない特別な晩餐会である。先頃のパリの哀しい事件もあった。会の始まりに壇上に立った大西社長の「先日フランスでは痛ましい事件がありました。まずはみなさんで黙祷したいと思います」との挨拶。そして、「日頃、日本の良いものを世界に向けて発信している弊社は、今回、フランスの誇るフランス料理と、日本の誇る日本料理のコラボレーションディナーを企画しました。一皿に日仏の味覚が競演する、これまでにない一夜限りの晩餐会です」と続け、この夜が夢の晩餐会であることを伝える。
オートキュイジーヌと呼ばれるフルコースの総指揮を振ったのは、日本料理「青柳」の小山裕久氏。
オートキュイジーヌ(haute cuisine)のhauteはフランス語で「最高の」、cuisineは「料理」の意を持つ言葉であり、ファッションの頂点であるオートクチュールになぞらえ、食の最高峰の表現として今回のプロジェクトで名付けたもの。伝統に支えられた職人技や手仕事、見た目、味まで細部にこだわった食の響宴である。
日本のみならずフランスでも活躍する小山氏の声掛けによる日本側特別チームは、4つの店で構成された。天ぷらの「天一」、日本料理の「吉兆」、和菓子の「とらや」、そして「青柳」。それぞれに長い歴史を持つ店である。一方のフランス側は、フランス大使館の専属料理人セバスチャン・マルタン氏が担当した。日本とフランスが一つの皿の上で共演する趣向であるのもこの晩餐会の大きな特徴だろう。アミューズ ブーシュ(amuse-bouche)からデセール(Dessert)まで突き出し+全5皿。産地に拘りながら季節感を大切に集められた素材は、贅を尽くした冬の幸である。
■古から綿々と続く日本の文化や季節感を大切に(天一)
晩餐会の準備中に日本側の特別チームの、4店それぞれの料理人に今回の料理の思いを訊ねてみると「古から綿々と続く日本の文化や季節感を大切すること。それは、料理に用いる素材はもちろんのこと、器や設えなど諸々が柱になっていると考えています。そのために素材はかなり重要視しました。天ぷらということよりも“天一”として何ができるかを念頭に置きました。例えば、オードブルの牡蠣、ホタテ貝は北海道、車海老は鹿児島、銀杏は、愛知は豊橋。そして椎茸は、私どもの契約農家のある群馬県のものを用意しました。天ぷらは火を通して仕上げる料理ですから、生ものを得意としない外国の方々にも楽しんで頂けるのも魅力であると思います。その上で、お客さまに揚げたてを召し上がって頂けるよう、最も注力しました。我々日本人にとってフランスはそのファッションや芸術など文化への憧れは多少なりとも持っているだろうと思います。そしてフランスの方々にとって日本の文化もまた。そんな文化的な意識の上で日本とフランスは心の繋がりを感じますし、今夜の会のことを非常に名誉に感じています」(天一・矢吹隆一氏)
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