離婚時の財産分与。どんなものが対象となる? 借入金も?
ファイナンシャルフィールド / 2021年3月22日 12時10分
女性の社会進出増加などの影響もあってか、離婚件数が増えており、自分自身で離婚を経験した方や、身近な方で離婚された方もいらっしゃるかもしれません。
今回は離婚時にもめることが多い「財産分与」について説明したいと思います。
人口動態を見ると
厚生労働省の令和元年の人口動態統計(確定数)(※1)によると、平成30年度の総人口は約1億2373万人、出生数は約87万人、死亡数は約138万人で、人口の自然増減数は約52万人の減少となっております。
このように人口は減少しているのですが、離婚件数は高い水準にあります。
婚姻件数は約60万件であるのに対して、離婚件数は約21万件です。
離婚件数を見ると、平成14年の約29万件をピークに漸減してきていますが、令和元年の婚姻件数に対する離婚件数の割合は約3分の1とほとんど変わっていません。
離婚とは
厚生労働省の司法統計(※2)によると、離婚の原因のベスト3は(1)性格があわない(2)暴力をふるう(3)異性関係です。
「離婚は結婚の数倍のエネルギーが必要」といわれますが、離婚するには次の3つの方法があります。
(1)協議離婚(夫婦の話し合いによる合意)
(2)調停離婚(夫婦の話し合いで結論が出ない場合)
(3)裁判離婚(調停で決裂した場合)
離婚した場合は、夫婦関係で悩まなくなったり、自分のやりたいことができるようになったりメリットもありますが、一方で生活水準が下がったり、子どもがつらい思いをしたりとデメリットも考えられます。
そして離婚時には「財産分与」の問題が出てきます。
財産分与とは
財産分与には、(1)夫婦が形成した財産の公平な分配(清算的なもの)、(2)離婚後の生活保障(扶養的なもの)、(3)損害賠償(慰謝料的なもの)の性質があり、離婚をした者の一方が他方に対して財産の分与を請求することができる制度です(※3)。
財産分与の対象となるのは「共有財産」で、つまり、夫婦で築いてきた共有財産を公平に分配するということです。したがって、特有財産(親から相続したした財産など)は対象外です。
ただし、財産分与を請求できる期間は、離婚から2年という期間制限がありますので注意が必要です。
離婚時の財産分与の対象は
上で述べたように、財産分与は大きく、精算的なもの・扶養的なもの・慰謝料的なものに分かれます。その対象となるものを細かく見ていくと以下のようになります。
<清算的なもの>
婚姻期間中に築き上げた共有財産が対象で、プラスのものもマイナスのものもすべて含まれ、原則2分の1ずつに分けます。主なものを挙げると次の通りです。
(1)現預金や有価証券など 有価証券は離婚時の評価額で計算
(2)不動産(土地・建物)や車など 離婚時の評価額で計算
(3)保険料 離婚時の解約返戻金の金額で計算
(4)年金 年金分割には「合意分割制度」と 「3号分割制度」があります。
「合意分割制度」とは、婚姻期間中の厚生年金記録を当事者で分割する制度です。そして「3号分割制度」とは、平成20年度以降に離婚し、3号被保険者からの申請で厚生年金記録を2分の1ずつ分割できる制度です(※4)。
(5)借入金 債務の目的により、共有財産から差し引かれるべきかどうか判断
具体的には、住宅・自動車・子供の教育ローンや生活費のための借り入れなどのマイナスの財産は財産分与の対象ですが、どちらか一方がギャンブルなど個人的に使った借金は財産分与の対象外になります。
<扶養的なもの>
専業主婦(主夫)の方が自立して生活ができるまで扶養することになります。
<慰謝料的なもの>
離婚の際の「慰謝料」とは、数字で表すことが難しいもので、離婚によって被る精神的苦痛に対して支払われる損害賠償のことです。
他に子どもが経済的・社会的に独立するまでに必要な「養育費」があります。
まとめ
親子・兄弟でも性格は違うもので、ましてや結婚の相手は別々の環境で育った別人格ですので、性格があわなくて当たり前です。
ただ、離婚は精神的にも金銭的にも苦痛が伴い、時間も労力もかかるものです。結論を出す前にはよく考えることが必要です。
そして、もしも離婚に踏み切る際は、財産分与などで困ることがないよう、必要であれば専門家に頼るなどして、しっかりと準備するようにしましょう。
[出典]
(※1)厚生労働省「令和元年(2019)人口動態統計(確定数)の概況」
(※2)厚生労働省「離婚に関する統計 12 司法統計からみた離婚」
(※3)法務省「財産分与」
(※4)日本年金機構「離婚時の年金分割」
執筆者:小久保輝司
幸プランナー 代表
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