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こんなはずじゃなかった! 定年直前に妻から差し出された〈1枚の紙〉…熟年離婚したら退職金、年金、不動産はどうなる?【社労士の助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月4日 7時15分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

昨今、珍しくない熟年離婚。離婚自体のショックの最中、離婚手続きのほか、財産分与もしなくてはなりません。年金や退職金、不動産は誰のものになるのでしょうか? 婚姻の円満な終了と、その後の新たな生活を前向きにスタートさせるため、離婚時の財産の分配について知っておきましょう。角村FP社労士事務所の特定社会保険労務士・角村俊一氏が解説します。

定年前の熟年離婚。今まで築いた財産はどのように分ける?

事例

定年まであと1年を切ったAさん(59歳)。貯蓄は平均以上で持ち家もあり、退職金と年金は人並みに貰えそうなので、定年後の生活に経済的な不安はありません。

Aさんは不動産会社の営業として家庭を顧みることなくバリバリ働いてきました。定年後は罪滅ぼしの気持ちから週3日程度の勤務にして、妻(Bさん)とのんびり過ごそうと考えています。

仕事の合間にスマホで観光名所のツアーを探したり、評判の良いレストランを調べたりすることが最近の日課。定年後を考えると楽しくて仕方ありません。

しかし...

いくつかの旅行プランを妻に提案したところ、返事の代わりに差し出された1枚の紙。

まさかの熟年離婚を突き付けられて、Aさんは唖然とするばかりです。

夫婦で築いた財産は公平に分けられる

熟年離婚は珍しくありません。

厚生労働省「令和4年人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、令和4年の離婚件数は17万9,096組となりました(同居期間不詳を含む)。

同居期間別の離婚件数をみてみると、熟年離婚と思われる同居期間20年以上の離婚件数は38,990組。離婚件数に占める割合は決して低いとはいえません。

通常、離婚時には財産を分けることになりますが、財産分与には3つの性質があるとされています。

①夫婦の財産関係の清算

②離婚後の生活に困窮する配偶者の扶養

③離婚に伴う損害賠償(慰謝料)

なかでも①が中心であると考えられているので、ある財産がたとえ夫婦どちらか一方の名義になっていたとしても、お互いの協力によって得たと評価できる財産は分与の対象となります。

では、Aさんの退職金や年金はどうでしょうか?

Aさんの退職金は誰の財産?

AさんとBさんは職場結婚。Aさんは働き続け、Bさんは結婚後しばらくして退職しました。

Aさんが定年退職すると、もちろん退職金はAさんに支払われます。Aさんの長年の勤務に対する「お疲れ様」的な意味合いが強いため、退職金はAさんの財産となりそうです。

しかし、Aさんが定年まで勤務することができたのは妻の支えがあったからこそ。Aさんの退職金は夫婦の協力関係により得られたものとも考えられます。

法務省「法制審議会家族法制部会第10回会議(令和3年12月14日開催)」の資料には、財産分与の対象に関し、「退職金など将来において取得が期待できる財産についても、婚姻中の夫婦の協力によるものと評価し得る部分は、対象財産となり得る」とあります。

また、日本公証人連合会のサイトにも、「退職金は、給料とほぼ同視でき、夫婦の協力によって得られた財産とみることが可能なので、財産分与の対象になり得ます」とあるように、Aさんの退職金は財産分与の対象となる可能性が高いといえます。

ただし、Aさんの退職金すべてが対象になるわけではありません。その対象となるのは婚姻期間に対応する部分の退職金に限られます。結婚する前に働いていた期間や、離婚してから働いた期間に応じた退職金は夫婦共同で形成したわけではないので、財産分与の対象にはなりません。

財産分与の割合は基本的に2分の1となるので、例えば、Aさんの勤務期間30年、婚姻期間20年、離婚時に見込まれる退職金が2,000万円であれば、「2,000万円×20年/30年×1/2≒667万円」がBさんのものとなります(あくまでも1つの計算例です)。

年金も元夫婦間で公平に!

財産分与は夫婦が共同生活を送る中で築いた財産の公平な分配という性格が強く、年金も例外ではありません。

年金については元夫婦間で年金の給付額に不公平が生じることを防ぐため、年金分割という制度が設けられています。

分割方法は、当事者の合意または家庭裁判所の決定により年金を分割する「合意分割」と、一方当事者の請求により自動的に分割される「3号分割」の2種類。

これらの制度で分割されるのは、老後の厚生年金額を計算するための基礎となる保険料納付記録です。

【年金分割のイメージ】

BさんはAさんの納付記録の分割を請求し、自らの納付記録に加える。Aさんの保険料納付記録は減り、Bさんの保険料納付記録は増え、それぞれ増減した記録に基づいて老後の厚生年金額が計算される。

なお、退職金の場合と同じく、分割対象となるのはあくまでも婚姻期間中の保険料納付記録に限られます。結婚前や離婚後の記録は対象とはなりません。また、国民年金部分は分割の対象外です。

熟年離婚を突然切り出されてショックを受けるAさん。さらに退職金や年金までもが財産分与の対象となることを聞かされて頭を抱えています。

結婚後に購入した自宅も財産分与の対象となりますから、売却して代金を分けるのか、どちらかが分与を受けて住み続けるのかなど、話し合いをしなければなりません。

Aさんが楽しみにしていたバラ色のセカンドライフ。思い描いていた定年後の生活は夢物語となってしまいました...

角村 俊一 角村FP社労士事務所代表 特定社会保険労務士/CFP

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