相続税を納めている人は、どのくらい?
ファイナンシャルフィールド / 2021年3月26日 10時30分
亡くなれた方の遺産、つまり相続財産が基礎控除の額を超えると、相続税の課税対象となる可能性が生じます。では、相続税を納めている人はどのくらいいるものなのでしょうか?
The post 相続税を納めている人は、どのくらい? first appeared on ファイナンシャルフィールド.「基礎控除の額」の計算とは?
相続税における「基礎控除の額」とは、以下のように計算します。
3000万円+600万円×相続人の人数
例えば、亡くなった人の相続人が配偶者と子ども2人の場合、
3000万円+600万円×3名=4800万円
4800万円が基礎控除の額ということになります。
また、亡くなった人に配偶者がおらず、子ども、そして両親もいない場合には、兄弟が相続人になります。
亡くなった人の相続人が兄弟1人の場合、
3000万円+600万円×1名=3600万円
3600万円が基礎控除の額です。
相続税を納めている人って、どのくらい?
先述のとおり、亡くなった人の相続財産が基礎控除の額を超える場合、相続税の課税対象となる可能性が生じてきます。相続税を納めている人はどのくらいいるのでしょう。
国税庁が2020年12月に公表した「令和元年分相続税の申告事績の概要」によりますと、2019年分の調査で亡くなったと報告された人の数は138万1093人です。
そして、被相続人のうち相続税の申告書の提出対象となった人は11万5267人です。
亡くなった人のうちその相続財産が相続税の課税対象となった人の割合は、
11万5267人÷138万1093人×100≒8.346・・・。
およそ8.346%ということになります。
いかがでしょうか?「意外と多いな」という印象をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
相続税を納めている人の割合の推移
亡くなった人のうち相続税の課税対象となった人の割合は、2015年以後8%台前半で推移しています。しかし、2003年から2014年までは、亡くなった人のうち相続税の課税対象となった人の割合は、4%代前半で推移していました。相続税の課税対象となった人の割合が、2014年と2015年とでは倍近くの差があります。
倍近くの差が生じた理由として考えられるのが、基礎控除の額の改正です。2014年までの基礎控除の額の計算は、以下のとおりです。
5000万円+1000万円×相続人の数
本稿の冒頭で述べた基礎控除の額の計算は、2015年以後の相続に適用されるものなのですが、2014年までのそれと比べると、6割ほどに縮小しているのが分かります。つまり、基礎控除の額の計算が6割ほどに縮小したことにより、相続税の課税対象となる方の割合が倍近くになったということなのです。
では、相続税を納めている人は、いくらくらいの相続税を納めているのでしょうか?
相続税って、いくら? そして相続財産の中身は?
相続税の納税額は、2019年においては相続人1人につき、1714万円です(国税庁「相続税の申告業績の概要」より)。
納税額は相続財産の価値を超えることはなく、相続した財産の中から払えば良いのですが、それでも、決して少ないといえる金額ではないとは思います。もっとも、相続した財産が必ずしも現金とは限りません。
では、相続財産の中身には、どのようなものがあるのでしょうか?相続財産の代表的なものは、土地、現金、株式等の有価証券、それに家屋などが考えられます。
相続財産の中身の推移
では、相続財産の中身はどのような割合なのでしょうか? それぞれの金額の構成比で見ていくことにします。
筆者の考えですと、2012年以後、土地の価格や株価は上昇傾向にあったように思います。つまり、金額の構成比も土地や有価証券が占める割合が増えていっているのではないかと推察していました。
しかし、有価証券が占める金額の構成比は増減を繰り返しながら、ほぼ横ばいです。また、土地が占める金額の構成比は右肩下がりです。一貫して増えているのが、現金が占める構成比です。
土地は小規模宅地の評価減など、相続税への対策が採りやすいのかもしれません。また有価証券は、株式であれば株価は増減します。
では、現金は相続税対策にならないのでしょうか?
確かに、現金は額面がそのまま相続財産としての評価になります。しかし現金は、一時払い終身保険の保険料に使うことができます。
なぜ、現金を終身保険に利用するのが良いのかというと、相続が現実になり受取人が死亡保険金を得るとき、死亡保険金には「500万円×法定相続人」という非課税の枠が発生します。これを活用すれば節税につながるのではないでしょうか。
まとめに代えて
以前、夫を亡くされた方から相続のご相談をいただいたときのことです。
夫が定年退職のときに受け取った退職金が、1円も手つかずのまま残っていました。「今後、年金制度がどうなるか分からず不安だ」が、夫の生前の口癖だったようです。この手つかずの退職金を初めて活用したのは、何と、相続税の納税資金だったという、なんとも皮肉な出来事でした。
もし、ご夫婦がこの退職金を活用し、セカンドライフの充実にあてるなどして実質的に課税対象額が少なくなっていれば、ひょっとしたら、相続税の納税もなかったかもしれません。現金の最も効果的な相続税対策は「使い切ってしまう」ことではないかと筆者は考えます。
しかし、人生100年時代です。年金制度への不安も尽きません。元気なうちに「現金を使い切ってしまう」というのも現実的ではありません。先述の終身保険への活用もしかり、セカンドライフこそ、しっかりとしたライフプランニングとマネープランニングが必要なのではないでしょうか。
(参考)
国税庁「令和元年分 相続税の申告事績の概要」
生命保険文化センター「相続税を払う人はどれくらいいる?」
財務省「相続税・贈与税に係る基本的計数に関する資料」
財務省「相続税の改正に関する資料」
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役
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