基準を変えると単価も変わる! 同じマンションの中なのに、こんなことってあるの?
ファイナンシャルフィールド / 2021年5月13日 3時10分
以前にも何度か書いていますが、商品の価格(総額)は【単価×量】で構成されています。総額、単価、量の3つの要素のうち、どこを気にして重視するのかは、商品によりけりかもしれません。
例えばマンションのように総額がかさむものでは、もとになる単価の違いが大きな差になってくるわけです。この単価の決め方が、同じマンションの中なのにかなり違っている。そんなことって、あるのでしょうか。
マンションの販売価格の決め方とは
マンションは、戸建てほどは個別性が強くないといわれます。同じ階の隣同士で同じ向き・同じ面積ならば、総額も同じになる住戸は珍しくありません。これは、「単価」と「量(面積)」が同じだからです。
では逆に、「単価」の差はどうやってつけるのか。基準となる階の中ほどの位置の住戸をまず決めて、ここの指数を仮に「100」とします。次に同じ階の中でも[向きは、南、東や西、北の順に好まれやすい]、[端の角住戸は、中ほどの住戸よりも日当たりや風通しが有利]といった基準で指数に差をつけていきます。
また階数が違うと(周囲の建物状況や環境にもよりますが)、[上層階ほど眺望が良くなる]、[下層階ほど日当たりや風通しが不利になる]といった基準でも指数が変わります。
ほかにも、ルーフバルコニーや専用庭がプラス要因になったり、エントランスやエレベーターなどが近くて人の通行が多い点がマイナス要因になったりと、1戸ごとの個別要素も指数に反映していきます。
このような流れで、【図表1】のような決め方になります。こうしたやり方がいつでもどこでも当てはまるわけではありませんが、各戸の価格を決める流れの1つがイメージできると思います。
同じ階なのに、こんなに「単価」が違うケースも
もちろん、こうしたやり方に沿っていない場合だってあります。例えば、ワンルーム住戸(20~25平方メートルくらい)とコンパクト住戸(40~50平方メートルくらい)が混在しているマンションで、次のような2住戸のケースです。
◇マンション内の位置
11階建ての7階部分にある(A)と(B)の住戸(ともに角住戸)
◇概要
(A) 価格 [2600万円] 専有面積 [22平方メートル]
⇒ 坪単価 約391万円
(B) 価格 [4350万円] 専有面積 [44平方メートル]
⇒ 坪単価 約327万円
少し丸めた数字ですが、東京23区城南エリアで近時に新築分譲されたマンションの実例です。まず目につくのは、坪単価の大きな違い。先述の価格の決め方ならば同じ階でともに角住戸ですから、こんな大差はつかないはずでしょう。
(A)のほうは主に投資用として販売され、賃貸した場合の月額賃料は8.5万円くらい。年間賃料102万円を販売価格で割った数値(3.92%)が「表面利回り」と呼ばれます。
では専有面積が倍の(B)ならば、月額賃料も倍額(17万円)取れるのか。ケース・バイ・ケースですが、規模が大きくなると単価は下がる傾向だといわれます。
この実例で(B)の賃料が仮に月額15万円ならば、(A)と同じ「表面利回り」を得るための販売価格は約4590万円という計算です。実際の販売価格よりはやや高めですが、(A)の倍額5200万円とは大きな差になります。
さらに(B)のほうは、実需(購入者が自分で住む)のニーズも少なくありません。この場合には投資用のような利回り計算ではなく、周辺で分譲された実績数値(販売単価)などを主体に価格決定されます。実際の販売価格も、そのようにして決まったのでしょう。
このように価格の決め方が異なる住戸タイプが混在することから、同じマンションの同じ階なのに販売単価が大きく違う住戸が発生するのです。先述の実例のほかにも、同じようなケースの物件を筆者はここ数ヶ月で複数目にしたことがあります。
まとめ
今回ご紹介したのはかなり極端な事例ですが、マンションの販売価格の決め方はいろいろです。全部が実需向けのマンションでも、必ずしも合理的ではないと思われる決め方によって住戸ごとに意外な単価差が発生しているケースはあります。
これは、1住戸ごとの“適正価格”をとことん精査してそれを「積み上げる」というよりも、先述のように全体として必要な売上高を指数などに基づいて個別住戸に「割り振りする」傾向が強いためともいえます。
マンション購入を検討する場合、「単価」で各住戸を比較して、向き・日当たり・眺望など自分の価値観に照らしてチェックしてみる。そんなことによって、結構“おトク”な住戸に出会えるかもしれません。
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士
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